ここから本文です

2015/12/04

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第2回 「青年希望ファンド」の有効活用を                                                    ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆ミスマッチ雇用の解決を◆

 景気回復を背景に、内定率や求人倍率が前年同期を上回り、若者の就職状況が好転している日本とは異なり、韓国における若者の就職状況はまだ厳しい状況が続いている。

 2015年10月の若者層(15~29歳)の就業者数は前年同月より10万1000人増え雇用率は41・7%に1・1ポイント回復し、失業率も7・4%で、2年5カ月ぶりに最も低い水準になっているものの、若者の多くは景気の回復を実感していない。

 朴槿惠大統領は、若年層の雇用問題を解決する目的で、15年9月15日の国務会議で「青年希望ファンド」の創設を提案し、翌日一時金 2000万ウォンを寄付し、継続的に月給の 20%を寄付することを表明した。

 「青年希望ファンド」の正式名称は「青年希望ファンド公益信託」で、若年層の雇用創出のために寄付金を集めて助成したファンドである。募金を公益信託で推進した理由は、若年層の雇用問題解決という公益を目的にすることで寄付を活性化するためである。

 ファンドという名称を使っているものの、寄付した元金と運用収益は寄付者に戻らず、すべての寄付金は若年層の雇用創出等のために使われる。韓国政府は寄付金の運用や事業推進のために10月19日に青年希望財団を設立しており、寄付を希望する個人は都市銀行や地方銀行の計13行を通じて寄付を行うことができる。寄付金に対しては15%の税額控除(3000万ウォン超過時超過分に対して25%税額控除)が適用される。

 朴槿惠大統領自らが「青年希望ファンド」の第1号寄付者になると、企業家の多くが半分自発的に、半分強制された形で「青年希望ファンド」への寄付意思を明らかにした。

 サムスン電子の李健熙会長が200億ウォンを寄付したことをスタートに、現代自動車の鄭夢九会長が150億ウォンを寄付するなど、企業家を含めた各界各層の寄付が続き、15年11月30日現在の寄付額総額は946億ウォン(寄付件数は9万2260件)に達している。

 「青年希望ファンド」は若年層の雇用問題に対する社会的関心を引き起こし、社会全体で対応しようとした点では評価する価値はある。

 しかしながら、このファンドだけで若年層の雇用問題を解決することは難しく、若年層が就職できない根本的な問題を解決することや若年層の雇用創出のための固定的な財源を確保する方法を考える必要がある。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>