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2016/10/14

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第45回 ビジネス教養のための韓半島問題②                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆地政学的立地の視点から考察を◆

 ビジネス教養のための韓半島問題を具体的に考察する。まずは、北朝鮮の基礎データを確認しておく。正式名称は朝鮮民主義人民共和国、人口は2515万人、面積は韓半島の55%(日本の33%)。北朝鮮は、国連加盟国193カ国のうち164カ国と国交を結んでいる。米国が国交を結んでいない国は、北朝鮮、イラン、ブータンの3カ国のみである。しかし米国は、イランと核関連の合意をしており、ブータンとも良好な関係であることから北朝鮮との関係が最も悪いと言わざるを得ない。

 最高指導者は、金正恩・朝鮮労働党委員長である。肩書は、他にも朝鮮民主主義人民共和国国務委員長、朝鮮労働党中央軍事委員会委員長、朝鮮人民軍最高司令官などがあり、3代目として就任以来、2016年10月時点で4年10カ月が経った。

 父である金正日総書記(1942年2月16日~11年12月17日、69歳没)の死去後、12年4月11日朝鮮労働党第1書記を経て、16年5月6日朝鮮労働党委員長に就任した。年齢は一般的に84年1月8日生まれの32歳と言われているが、誕生年が81年~84年の4つの説があるので35~32歳ということとなる。

 歴代の最高指導者は、初代が金日成主席(12年4月15日~94年7月8日、82歳没)で任期は48年9月9日~94年7月8日の46年間。2代目が金正日総書記で任期は94年7月8日~11年12月17日の17年間であった。

 金正恩党委員長の母は、高英姫氏(52年~04年、62歳没)で金正日総書記の5人の妻・妾のうちの3番目である。高英姫氏は、大阪生まれで10歳の時に北朝鮮に帰国。氏名は、高田姫から高英姫に改名した。また、漢字表記は高踊姫という説もある。

 金正恩党委員長の兄弟は、6人兄弟・3男3女(うち3人は異母兄弟)で5番目の3男である。学歴は、9歳~16歳(93年~00年)まで7年間、スイスに留学した経験がある。また、金日成総合大学で情報工学を、金日成軍事総合大学で砲兵指揮を専攻したとされている。筆者が金日成総合大学で招聘講師をした時に次女の金雪松氏が同校にスクーリングしているとの話を担当教官から直接聞いた。したがって金正恩党委員長やその兄弟は、基本は家庭で勉強させられ、たまにスクーリングするという学習形態で学歴を積んだと推測される。

 金正恩党委員長の妻は、李雪主氏(89年9月28日生、26歳)でかつては歌手として活動し、父親は大学教員、母親は医師である。

 北朝鮮は、何を考えているのか分からない。また、予測不能であり、専門家の予想もことごとく覆されている。しかしメッセージは、明確であり、ある意味一貫している。それは、韓半島を分断する38度線を朝鮮戦争休戦協定から平和協定に転換することである。53年7月27日に署名された休戦協定の正式名称は、「朝鮮における軍事休戦に関する一方国際連合軍司令部総司令官と他方朝鮮人民軍最高司令官および中国人民志願軍司令員との間の協定」。

 主な内容は、「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」ことである。署名人は、国連軍総司令官マーク・W・クラーク大将(米国陸軍大将)と金日成・朝鮮人民軍最高司令官と彭徳懐・中国人民志願軍司令員(中国元帥)、すなわち米国と北朝鮮と中国の3カ国である。

 北朝鮮が平和協定に転換したい理由は、締結できれば終戦、講和になるため正式に独立できるからである。繰り返しになるが、金正恩党委員長は、平和協定、独立を認めてくれというメッセージを込めて核実験やミサイル発射を行っているのである。最早、このような武力を使った不器用な方法でしか外交交渉ができなくなっている。署名国である米国と中国は、北朝鮮に対して対話という外交交渉が最も効果的で利益になることをよく説明し、上手く導く必要があるのではなかろうか。しかしそのためには、まず米国と中国が、北朝鮮との平和協定、独立によって何らかの利益が必要のようである。どのような利益が考えられるであろうか。


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