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2016/12/16

<オピニオン>転換期の韓国経済 第82回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第82回

◆道のり険しい輸出拡大◆

 韓国の輸出額(通関ベース)が2015年の前年比8・0%減に続き、16年(1~11月、11月は速報値)も7・0%減と、2年連続で前年比マイナスとなる見込みである。

 これは世界経済の減速や輸出先での国産化なども影響しているが、最大の輸出相手先である中国向けの減少によるところが大きい。2000年代前半は中国の高成長に支えられて対中輸出額が著しく伸びたが、14年0・4%減、15年5・6%減、16年12・0%減(1~10月)と、3年連続で減少している。

 対中輸出の減少要因には、中国の成長減速に加えて、中国における急速な国産化(含む外資系企業)に伴い、韓国から中間財輸出が減少していることが指摘できる。例えば、ナイロンの原料となるカプロラクタムの韓国からの輸出は近年ほぼゼロになった。また、液晶パネルは、中国企業が生産を急拡大していることと、韓国企業が現地生産を開始したことにより、輸出額が減少している。対中輸出額が減少したこともあり、韓国の対中輸出依存度(対中輸出額/輸出総額)は13年の26・1%から16年に24・9%へ低下した。

 ちなみに、日本の対中輸出依存度は、中国での生産コスト上昇と反日デモを契機に「チャイナ+1」の動きが広がった結果、11年の19・7%から16年に17・3%へ低下した。

 韓国でも、企業が過度な対中依存の是正を目的に生産拠点と輸出先の多様化を進めていること、韓国政府のTHAAD(戦域高高度防衛ミサイル)の配備決定を契機に、中国で韓国製品に対する事実上の輸入規制が強まっていることなどを勘案すると、対中輸出依存度は今後も徐々に低下していく可能性が高い。対中輸出依存度が低下傾向にあるのに対して、対米輸出依存度は11年をボトムに緩やかに上昇していること、新たな輸出先として、ベトナムやメキシコが登場してきたのが注目される。とりわけ対ベトナム輸出額は増加基調で推移しており、15年以降ベトナムが韓国にとって4番目の輸出相手先になっている(上表)。輸出総額に占める割合は16年時点で6・5%である。

 対ベトナム輸出額が増加した背景に、韓国企業による投資の拡大がある。韓国の対外直接投資額(韓国輸出入銀行データ、実行額)の推移をみると、最近3年間の合計額では、ベトナムが米国、中国に次ぐ3番目の投資先となっている。

 他方、輸出品目においても、近年変化が生じている。韓国では「13大輸出品」(船舶、無線通信機器、一般機械、石油化学、鉄鋼製品、半導体、自動車、石油製品、平面ディスプレ-、繊維類、家電、自動車部品、コンピューター)が全体の約8割を占める。これらの主力輸出製品の15年の伸び率は9・4%減と、全体の伸びを下回ったが、このうちの「新規有望輸出品」であるOLED(有機ELディスプレ-)、SSD(ハードディスクのように動作するメモリー装置)はそれぞれ25・0%増、26・6%増となった。


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