ここから本文です

2016/03/04

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第5回 「共有経済」は韓国経済の救世主となれるか                                                    ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆新成長産業への新しいチャンスに◆

 韓国政府は2月17日に開かれた第9回貿易投資振興会議でシェアリングエコノミー(共有経済)に対する規制を緩和すると発表した。シェアリングエコノミーとは、「財貨やサービスを特定の個人が所有せずさまざまな人が共有して使う」という概念で最近欧米を中心として急成長しているビジネスモデルである。

 韓国政府は、シェアリングエコノミーの活性化のために、「シェアリング民宿業(仮称)」を新設し、住宅所有者が居住している住宅を宿泊サービスとして短期的に提供することを許容する方針を決めた。2016年の第2四半期に、国会に「規制自由地域特別法」を提出し、釜山、済州、江原道から試験的に「シェアリング民宿業」を導入し、17年に制定する「宿泊業法」を通じて全国的に拡大する計画である。

 一般宿泊業より緩和された一定要件を備えて登録すれば年間最大120日まで自宅や空き部屋を宿泊共有サイトで貸し出すことができる。また、車両共有業者に対する支援を拡大するとともに規制を緩和し、車両共有サービスを活性化する方針である。韓国の代表的なカーシェアリング業者である「グリーンカー」(11年創立)と「ソーカー」(12年創立)の会員数は16年2月現在それぞれ約140万人と約150万人まで急増する等、毎年需要が増加している。創立当時の会員数が数千人規模であったことと比べると飛躍的な成長だと言わざるを得ない。しかしながら免許停止者のような運転不適合者の判別が難しいことやカーシェアリングができる駐車場の確保が難しいという課題もあり、業者側は利用者に対する情報提供や公共駐車場の使用許可を政府に求めてきた。今回の第9回貿易投資振興会議では業者側の声を反映し、今年の第3四半期中に関連法を改正することにより、利用者の免許情報を警察庁や道路交通公団がカーシェアリング業者に提供できるように法的根拠を整えることを明らかにした。また、公共駐車場の利用を許可する駐車場法の改正も推進すると発表した。

 しかしながら、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶことにより小遣い稼ぎをする「ウーバー」のような乗車共有サービスは今回の対策から排除された。タクシー協会の反発が大きいのがその主な理由であり、暫くの間、ウーバーのような仕組みが韓国に導入されることは難しいと見通されている。

 韓国政府がこのように規制を緩和するまでシェアリングエコノミーの導入に積極的な動きを見せているのは、原油安や中国経済の減速等の外部的な影響もあり、韓国経済を牽引してきた製造業が停滞期を迎えていることが挙げられる。つまり、シェアリングエコノミーは品物や資源、才能等を所有せず、インターネット上のプラットフォームを介して、場所や乗り物、そしてモノなどの遊休資産を個人間でシェアする新しい経済の仕組みで、優秀な韓国の情報通信技術のインフラを活用すればシェアリングエコノミーが新たな収益源になれると韓国政府が判断したからである。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>