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2017/04/07

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第18回 韓国版プレミアムフライデーの実施発表                                                      ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

  • ニッセイ基礎研究所 金 明中 准主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年仁川生まれ。韓神大学校日本学科卒。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て現在、ニッセイ基礎研究所准主任研究員。

◆体系的で長期的な政策の実現を◆

 最近、日本政府は働き方改革に積極的な動きを見せている。3月28日には働き方改革実現会議を首相官邸で開き、同一労働同一賃金の導入や正社員の長時間労働の見直しを盛り込んだ9分野での実行計画をまとめた。日本政府は、今後国会に関連法の改正案を提出し、2019年度からは関連内容を実行する計画である。その中でも日本政府が最近最も力を入れているのが長時間労働の是正であり、その一環として実際されているのが「プレミアムフライデー」である。プレミアムフライデーとは、長時間労働の是正と個人消費の喚起を狙い、月末の金曜日は、早めに(一般的に午後3時)仕事を終えて豊かに過ごすという行動を官・民が連携して創り出すプロジェクトであり、今年の2月24日に初めて実施された。しかしながら、制度の本当の趣旨は、長時間労働の是正より、早い時間から買い物や旅行などをしてもらうことにより、消費を拡大させ現政権が目標にしているGDP600兆円を早期に達成することであると言えるだろう。プレミアムフライデーの取り組みに賛同し、プレミアムフライデーのロゴマークを申請している企業や団体は17年4月4日時点で6169社に達しているものの、制度の実施が義務化されておらず導入如何は各企業の判断に委ねられている。従って、現在のシステムを維持したまますべての企業にプレミアムフライデーを普及させるのは現実的に難しいと言える。また、労働者にとってもプレミアムフライデーの利用は義務化されておらず、会社の経営方針や企業文化により利用率に差が発生することや月末が繁忙期である金融業界や経理部門等では利用が制約されがちである。さらに、プレミアムフライデーに早く帰るために、ほかの日の残業時間を増やす労働者もいるだろう。制度の定着までまだ解決すべき問題が山積している。

 一方、韓国政府は日本のプレミアムフライデーをベンチマーキングして、月末の金曜日は、午後4時に仕事を終えて退社する「韓国版プレミアムフライデー」を4月末から実施すると発表した。日本のプレミアムフライデーが官民共同で実施されていることに比べて、韓国のプレミアムフライデーは、まずは企画財政部、人事部、気象庁等の中央官庁から実施され、その後段階的に地方官庁や民間企業に拡大される予定である。また、民間企業に適用する際には、月曜日から木曜日までの労働時間を30分延長する代わりに、毎週金曜日の退社時間を2時間早める(午後6時から午後4時に)案等も検討されている。しかしながら、日本のプレミアムフライデーと同様に韓国版プレミアムフライデーも企業にその実施が義務化されておらず、韓国政府の思惑通りに制度が定着するとは思えない。さらに、韓国では日本以上に残業が多く、残業をすることが当たり前という企業文化がまだ強く残存している。制度の普及は日本以上に難しいかも知れない。

 韓国の労働者一人当たりの平均年間労働時間は15年時点で2113時間と、日本(1719時間)やOECD平均(1766時間)を大きく上回っている。OECD諸国の中で韓国より労働時間が長い国はメキシコ(2246時間)のみである。韓国の長時間労働が世界的にも深刻な水準であることが見て取れる。

 韓国政府は長時間労働の問題を解消し、新しい雇用を創出するために週末勤務を含めた1週間の労働時間の上限を現在の68時間から52時間に減らすことを推進しているものの、反対する意見も多く、実施までは難航が予想される。反対の最も大きな理由としては労働時間の減少により収入が大きく減少することが挙げられる。特に、韓国の中小企業や零細企業で働いている労働者の場合、大手企業で働いている労働者に比べて、賃金水準が低く、残業手当が生活費の一部になっているケースが多い。そこで、


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