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2017/03/17

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第50回 ビジネス教養のための韓半島問題⑦                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆情勢を理解し管理、解決を◆

 前号にて2017年の韓半島は、「タガが外れた」状況であることから、情勢が近年になく緊迫する、緊迫のステージが一段上がると分析した。その後、北朝鮮の金正恩委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで毒殺されるという前代未聞の暗殺事件が起きた。この暗殺事件の真相は、時間が経つにつれ解明されつつある一方で、謎が謎を呼び複雑怪奇な様相を呈している。また、北朝鮮は、3月6日に弾道ミサイル4発を発射し、いずれも約1000 ㌔飛び、秋田県・男鹿半島から西に約300~350 ㌔の日本海に落下した。朝鮮中央通信は、有事の際に在日米軍基地への攻撃を担う朝鮮人民軍戦略軍火星砲兵部隊の訓練であったと報じた。

 北朝鮮は、3月1日に始まった韓米合同軍事演習「フォールイーグル」への反発を強めており、在日米軍を攻撃対象と示すことで牽制する狙いがあると見られている。北朝鮮の慈成男国連大使は、韓米合同軍事演習に対して「最も露骨な核戦争策動」、「韓半島の状況は核戦争直前に再び近づいている」と非難すると共にその旨の公開書簡を国連安全保障理事会に送付した。因みに韓米合同軍事演習は、4月下旬まで約2カ月間実施され、米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」の投入や韓米両軍計約32万人の参加など過去最大規模の訓練となる見通しである。

 それでは北朝鮮問題は、どのように理解し、管理・解決すればよいのか。北朝鮮は、「核廃棄には絶対に応じない。核廃棄を前提とする限り6カ国協議には出ない。わが国を核保有国と認めるなら、米国と和解したい」と主張している。具体的には、自国民に対して「核兵器保有国としての誇り」を持つことを求めると共に「防衛力の強化」、「科学の振興」などと祝賀するよう仕向ける。また、核兵器を米中韓との交渉材料と考え、核兵器を廃棄する代わりに米国から和解を引き出す。そして米国と和平条約を結び、60年以上「休戦」状態のままの朝鮮戦争を正式に終わらせようとしているのである。そのための外交戦略としては、中国に対して米朝が和平条約を結べるよう仲裁役を求めている。また、同時に米国や中国に対して自国を「核兵器保有国」として認めるよう要求している。すなわち北朝鮮は、すでに開発した核兵器を保有したまま、米国と和解することを求めているのである。もしこの要求を飲んでくれないのであれば米国が和平条約を結ぶまで、何度でも核実験を繰り返し、核兵器の開発を進めるとしている。

 このような北朝鮮に対して米国は、地中30㍍まで貫通する「バンカーバスター(地中貫通型爆弾)」で北朝鮮の核兵器をピンポイント攻撃すべきだという意見が出たことがある。しかし、核兵器をどこに隠しているか分からないので攻撃のしようがないということで頓挫した。また、対北経済制裁の強化が日米でよく議論されるが、日米はすでに北朝鮮との経済関係をすべて絶っており、これ以上北朝鮮を制裁しようがない。米国は最早、これまでの10年以上の対北政策が、失敗したことを認めている。ケリー国務長官(当時)は、


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