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2017/07/21

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第54回 ビジネス教養のための韓半島問題⑪                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆北のICBM成功で世界秩序に地殻変動◆

 北朝鮮が2017年7月、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)」である「火星14」の発射実験に成功したと発表した。朝鮮中央テレビは、「特別重大報道」として伝え、「火星14」の運搬から分離、発射に至るまでの写真11枚を放映した。写真の中には、金正恩委員長が、発射成功に笑顔で拳を握って随行員らと喜びを表す姿もあった。また、労働新聞が「火星14」の試射に関する記事と写真56枚を掲載した。ICBM とは、Intercontinental ballistic missileの略語で射程距離が5500㌔以上のものを呼ぶ。5500㌔という規定は、かつて米国とソ連(ロシア)が、核兵器の削減交渉をした際に米国北東部とソ連北西部を結んだ距離を基準にして決められたものである。ICBMは、射程が通常8000㌔~1万㌔であるため「火星14」は北朝鮮から米国アラスカまで到達する能力があるとみられている。

 北朝鮮の発射実験を受けて米国は、北朝鮮が発射した弾道ミサイルの種類がICBMであったと認めており、ティラーソン国務長官が「強く非難する」との声明を発表した。韓国は、文在寅大統領が北朝鮮と融和政策をとるとしていたのにも関わらず、「北の厳重な挑発にわれわれが声明だけで対応する状況ではなく、われわれの確固たるミサイル連合対応態勢を北に確実に示す必要がある」と述べた。また、韓米のミサイル部隊が、弾道ミサイルの射撃訓練を実施した。このような韓国の姿勢に対してトランプ氏は「北朝鮮の挑発に対する文大統領の断固とした意志を高く評価し、共感する」と述べている。

 一方、北朝鮮は、金正恩委員長が「火星14」の発射後に「米国が、朝鮮敵視政策を根源的に改めない限り、いかなる場合も核とICBMを交渉テーブルに載せない」と宣言している。暴走する北朝鮮に対して、米国だけでなく、韓国までも強硬策を取り始めていることからレッドラインは、もはや超えたといっても過言でなく、いつ北朝鮮に対して軍事行動に踏み切ってもおかしくない状況に陥っている。

 この緊迫した北朝鮮の核ミサイル問題は、国際情勢に大きな影響を与えるだけでなく、世界秩序にも地殻変動を引き起こしている。また、韓半島の統一問題に対する議論を活発化している。1つは中ロが主導し、韓半島および北東アジア安全保障体制を構築しようとしている。2017年7月にモスクワで習近平主席とプーチン大統領が中ロ首脳会談を行い、韓半島の問題解決のための一種のロードマップを提示した。

 これは、北朝鮮の核・ミサイル試験の中断および米韓による大規模合同訓練の中断→交渉開始→武力不使用・不侵略・平和共存を含めた総体的原則の確定→核問題を含むすべての問題の一括妥結→韓半島および北東アジア安全保障体制の構築→米朝国交正常化を実現するというものである。

 2つ目は、ロシアが中国との連携だけでなく、単独でも韓半島の平和のための仲裁者になると主張している。ロシア共産党機関紙プラウダは、2016年1月「プーチンにはいかに南北を和解させるかについてプランがある」、「米国は北朝鮮に新たな制裁を加えるが、プーチン大統領は南北首脳会談を準備している」と報じた。

 プーチン大統領の狙いは、韓半島統一の礎となり、ロシアの国際的地位の向上を図ることである。また、万が一金正恩政権が崩壊した場合、ロシアと国境を接する地域に新たな親米国家が誕生することを懸念しているということもあるであろう。

3つ目は、


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