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2017/12/08

<オピニオン>転換期の韓国経済 第94回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第94回

◆増加の兆しある日本の対韓直接投資◆

 最近、日本の韓国への直接投資が再び増加するのではないか、と思わせるような統計が相次いで発表された。

 最初に注目したいのは、産業通商資源部が発表した2017年1~9月期の韓国への外国人直接投資額(申告基準)である。全体の投資額が前年同期比9・7%減となるなかで、日本からの投資額は同90・2%増となった。EU(欧州連合)と中国からの投資額が急減しただけに、日本からの投資増加が際立った。今年に入り朝鮮半島をめぐる情勢が不安定さを増したため、日本からの投資増加は意外な印象を与えた感がある。

 日本からの投資増加は、12年をピークに減少していた(上図参照)反動によるところもあるが、次の二点が要因として指摘できる。

 一つは、韓国の大企業による生産拡大の波及効果である。グローバル市場向けに生産する韓国の大企業に対し、高度な素材、部品、製造装置を供給している日本企業が多いため、韓国企業が生産能力拡張や新規生産に乗り出すと、現地での投資および日本からの輸出が増える傾向がみられる。最近では、有機EL、半導体、電気自動車向け電池などの分野でこうした動きが生じている。

 もう一つは、第4次産業革命に関連した投資の実施である。産業通商資源部は日本からの投資増加の一因として、IoT(モノのインターネット)、ソフトウエアなどの分野で投資が増えていることを挙げた。この点では、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)や各地方自治体が積極的に投資誘致を行ってきたこと、日韓の経済団体が両国間の事業協力案件を探してきた効果が表れたともいえる。

 韓国では近年スタートアップに対する支援環境が整備され始め、起業が活発化している。「韓国スタートアップエコシステム白書2016」によれば、スタートアップ企業の業種別構成はモバイルインターネットが51%で最も多く、インテリジェントサービスオートメーション、IoTが続いている。

 こうしたスタートアップ企業に投資する外国企業も増加している。日本ではソフトバンクグループが積極的であり、16年に、EコマースのCoupangに10億㌦の投資を行った。孫正義社長は16年9月末、当時の朴槿惠大統領と面会した際に、IoTやAI(人工知能)、インターネット、スマートロボット、電力などの分野へ今後10年間で5兆㌆投資する方針を示した。

 つぎに注目したいのは、国際協力銀行が毎年実施している「海外直接投資アンケート」結果で、17年度に韓国が中期的有望事業展開先の10位になったことである。

 昨年までの3年間、15、16位で推移していたので、今回は大幅な上昇といえる。得票率は16年度の3・1%から6・3%へ倍増した。有望理由の上位には、「現地マーケットの現状規模」、「現地マーケットの今後の成長性」、「現地のインフラが整備されている」が選択されている。このほか、


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