ここから本文です

2017/11/28

<オピニオン>韓国経済講座 第200回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員。

  • 韓国経済講座 第200回

◆「外華内華」に繋がるか?◆

 そろそろ来年が気になる頃だ。北朝鮮の核挑発による地政リスクの高まり、中国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備報復措置長期化、アメリカの国益優先主義強化など、今年も韓国を取り巻く国際環境が厳しい年であった。何よりも国内環境が深刻さを増していた。

 第18代の朴槿惠大統領が韓国憲法の規定(第65条、第111条、第113条)に基づく大統領弾劾訴追の手続きを経て、任期途中に罷免されたことに伴い大統領選挙が5月9日に行われ文在寅氏が当選し、翌5月10日に大統領に就任した。

 その後、新政権は①国民が主人の政府、②共に豊かに暮らす経済、③国民の人生に責任を負う国家、④均衡発展する地域、⑤平和と繁栄の朝鮮半島という5大目標を掲げ、国家再建に向けて出帆した。

 韓国経済の課題を「低成長」と「二極化」と捉え経済政策の基調は分配政策だ。二極化の進行は10年越しの課題でこの間深刻さを増し回復の見込みが困難なところまで達しており、その中で高い失業と極めて低い物価水準が同居する「デフレ経済」が深刻化してきた。大統領不在、政策主体不在などの影響で上半期の経済は停滞し、今年も韓国経済は低迷するという懸念が蔓延していた。

 しかし、後半期に入ると先進国の順調な景気から株高が続き、韓国輸出の好調が続いた。経験則では、韓国経済の景気回復はまず輸出が好況を取り戻し関連産業がけん引され、その勢いで国内需要を回復させるというパターンである。しかしながら2008年のリーマンショック以降所得二極化、若年失業率の深刻化、急速な高齢化など構造的問題によりかつての経験則が作用しなくなってきており、必ずしも輸出の伸びが内需を引き上げなくなってきている。

 掲げた表はごく最近の景気改善情報である。経済成長率の上方修正を複数の機関が行い、いずれも3%以上に修正し景気上昇感を示している。これをけん引しているのは輸出部門で、12カ月連続で前月を上回っており、先月10月は半導体や船舶、石油製品など主力品目の好調で前年同月比7・1%増加したという。前々月の9月には1956年の統計開始以来、月間ベースで過去最高額(551億3000万㌦)を記録した。この間、米最新鋭地上配備型迎撃システム「THAAD」発射台の在韓米軍基地への追加配備が9月に完了し中国の「報復措置」がさらに強化された。

 こうした市場制約にもかかわらず、この輸出の伸びは韓国企業の「ポスト・チャイナ」市場戦略がASEAN、インド、後発アジアなどへと市場転換が進み、市場全体として多角化が進展したことを示している。

 そして、これらを支えている鉱工業生産は、9月期、自動車や船舶、化学製品の生産が前月比0・1%増え、3カ月連続の増加、さらにサービス業生産も1・3%増と4カ月増加を維持しているという。生産活動の増加は、消費の持ち直しにも徐々に及んでいる。

 韓国開発研究院(KDI)の「経済動向11月号」によると、


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>