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2018/11/30

<オピニオン>転換期の韓国経済 第106回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 転換期の韓国経済 第106回

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第106回 

◆投資を上向かせるのに必要なこと◆

 最近、韓国経済の先行きに対して、悲観的な見方が増えている。この背景には、米中貿易戦争の激化に伴う輸出環境の悪化や経済の半導体依存への警戒、雇用環境の悪化などがある。雇用環境の悪化には、文在寅政権が進めた最低賃金大幅引き上げの副作用が顕在化したことが関係している。

 足元をみると、輸出は鈍化しつつも、安定的に伸びている一方、投資が急減速している。建設投資と設備投資の伸びは2018年4~6月期、7~9月期と二期連続で前期比、前年同期比ともマイナスになった。

 こうした状況下、経済成長率見通しを引き下げる動きが相次いでおり、韓国銀行は10月、18年、19年の実質GDP成長率見通しをともに2・7%と、4月時点の見通し(それぞれ3・0%、2・9%)から下方修正した。18年の見通しを0・3㌽引き下げたのは、当初の予想以上に投資が減速すると判断したことによる。

 ただし注意したいのは、投資の減速はある程度予想されたものであったことである。

 17年の実質GDP成長率は3・1%と、3年ぶりの3%台を記録したが、これは、建設投資が前年比7・6%と比較的高い伸びを維持した上、輸出の回復が進み、設備投資の増勢が強まったためである(上図)。

 建設投資が高い伸びを続けたのは、①前政権下で、景気対策の一環として住宅融資規制の緩和と利下げが実施されたことにより、住宅投資が増加したこと、②18年の冬季五輪開催を控えて、特需が生じたことによる。

 住宅投資を中心にした建設投資の拡大は景気を下支えした一方、


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