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2018/02/09

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第60回 世界が北朝鮮問題の解決方法を探る②                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆「圧力の強化」とレッドライン◆

 北朝鮮情勢は、悪化の一途を辿る一方、世界の多くの国が北朝鮮問題の解決に向けて様々な方法でアプローチが行われている。その方法は、大きく分けて「圧力の強化」と「対話の努力」である。前号に引き続き、「圧力の強化」の方法とその効果について考察する。軍事圧力は、一定程度の効果があるということは否めないが、一方、強めれば強めるほど偶発的な武力衝突の確率が上がる。まさしくハイリスク・ハイリターンである。主な関係国は、「圧力の強化」を図ると言えどもいつまでも続けることはできず、限度や限界がある。すなわち北朝鮮に対して軍事行動に踏み切る基準「レッドライン」がある。主な関係国の「レッドライン」を分析する。米国は、「第6回目の核実験とSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)」の発射実験に成功したら攻撃するというのが、一般的な見方である。以前は、「第6回目の核実験とICBM(米国本土に届く大陸間弾道弾)」が、「レッドライン」であるとの見方が大勢を占めていたことから妥協したとも言える。

 中国は、「新たな核実験」、すなわち「第7回目の核実験」である。換言すれば核弾頭を搭載できるミサイル開発やICBMに対しては、文句を言わないスタンスを取るという見方ができる。ただ、「レッドライン」を越えたとしてもその時の攻撃方法は、北朝鮮に対する軍事行動でなく、北朝鮮への石油輸出の制限など経済制裁である。

 中国は、このようにある意味北朝鮮に対して寛容であるにも関わらず、北朝鮮は中国に対しても逆恨みしている。核開発の中止を求める中国に対し、「朝中関係の赤い線(レッドライン)を中国が越えている」と強く非難している。中朝間の「レッドライン」は、「核は、尊厳と力の絶対的象徴であり、赤い線を越えているのはわれわれではない」と主張しており、尊厳と主権を侵害しないことだと強く主張している。

 ロシアは、「レッドライン」の基準以前に「レッドライン」そのものがあるかどうかが疑問である。ロシアの専門家によるとプーチン大統領は、外交政策の優先順位を「ウクライナ・クリミア問題」、「シリア問題」、「旧ソ連国問題」、「NATO問題」の順としている。NATO(北大西洋条約機構)とは、北大西洋条約に基づき米国を中心とした北米および欧州諸国によって結成された軍事同盟(29カ国)である。最近、モスクワで開催された外交に関する国際会議では、北朝鮮問題に触れられることは触れられたが、関心事にはならなかったとのことである。2017年5月に開催された中ロ首脳会談では、両首脳が北朝鮮情勢の緊迫化に懸念しつつも対話によって解決するという方針で合意した。ロシアは、経済制裁どころか、北朝鮮との経済連携を強化している。2017年1~3月のロ朝貿易額は、前年同期比85%増加している。特に北朝鮮への輸出は、同133%増の3141万㌦でその大半はエネルギーである。すなわちロシアの北朝鮮へのエネルギー輸出が、倍増したこととなる。また、公式統計には出ていないが、ロシアから北朝鮮に年間数10万㌧規模の石油製品が流入しているとの分析もある。2017年5月からは、ロシアと北朝鮮との間で貨客船「万景峰号」による定期航路を開設した。今後、ロ朝貿易は、年間1億㌦程度にとどまっているが、2020年までに10倍に増やす目標も立てている。したがってロシアは、対話によって解決するという姿勢を示しているだけで、「レッドライン」を設けているとは到底考えられない。

 ロシアは、


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