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2018/03/16

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第61回 世界が北朝鮮問題の解決方法を探る③                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆「圧力強化」と「対話の努力」◆

 北朝鮮情勢は、悪化の一途を辿る一方、多くの国が北朝鮮問題の解決に向けて様々な方法でアプローチが行われている。その方法は、大きく分けて「圧力の強化」と「対話の努力」である。前号に引き続き、「レッドライン」を超えた場合、どの国が先制攻撃するのか、そしてその影響・被害はどうなるかについて分析する。

 北朝鮮が、先制攻撃する場合をシミュレーションする。北朝鮮の先制攻撃は、最悪のシナリオであり、その影響・被害は甚大である。米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」の「ソウルと東京に対する仮想核攻撃・人命被害報告書」では、北朝鮮がソウルと東京に核兵器を使用した場合、210万人が死亡、770万人の負傷者が出ると予測した。具体的には、北朝鮮が25㌔㌧弾頭のミサイル計25発を東京とソウルに向けて発射し、うち20発が日韓の迎撃ミサイルをかいくぐって目標の上空で爆発した場合、東京で約94万人、ソウルで約116万人が死亡するとしている。因みに米国が、広島に投下した原爆は16㌔㌧、長崎は21㌔㌧であった。「38ノース」の分析は、緻密で信憑性が高いと言われている。また、米国防総省の戦争シミュレーションでは、韓国で1日に2万人の死者が出るとも予測されている。韓国には、駐韓米国人約20万人、駐韓米軍関係者2万4000人が居住していることから被害は米国人にも及ぶ可能性が高い。さらに、米国ノーティラス研究所の報告書では、米軍が北朝鮮の核・ミサイル施設に攻撃を行い、朝鮮人民軍が通常兵器で韓国の軍事施設に砲撃を行ったと仮定すると数時間以内に少なくとも3000人、ソウルを砲撃した場合は最高で3万人の死者が発生する。また、予告なしに攻撃された場合、1日で最大6万人が死亡し、そのほとんどが3時間以内に発生すると分析している。

 米ワシントン・ポストとABCテレビが実施した合同世論調査(2017年9月18~21日、回答者1002名)では、「米軍に軍事行動が許容されるのは、北朝鮮が米国や同盟国を先に攻撃したときに限る」との回答が67%に上った。したがって北朝鮮が先制攻撃した場合は、米軍の軍事行動が許容され、朝鮮半島のみならず、日本においても甚大な被害が予想される。このような武力衝突が現実味を増している証なのか、米国と中国は、両国の制服高官が、2017年4月以降、「北朝鮮有事シナリオ」について議論を重ねている。2017年8月には、米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が訪中した。議論内容は、至ってシビアなものであり、北朝鮮有事時には米中が協調して統治することや、北の核施設は中国軍が管理下に置くことなどが話し合われた。先制攻撃は、米国か、北朝鮮かのどちらが先に攻撃するかという二者択一的に見られているが、中国が先制攻撃をするということも考えられる。中国は、「北朝鮮が先制攻撃すれば、中国は軍事介入しない。しかし米国が先制攻撃すれば、中国は軍事介入する」と言及し始めている。もし中国が、軍事介入することになれば米朝戦争に止まらず、大国も巻き込んだ第2次朝鮮戦争などに飛び火する可能性も出てくる。

 そこでこのような最悪の事態を避けるべく中国は、先制攻撃はしないが、北朝鮮を2つの方法で自らの影響下に置くためのシナリオを描いている節がある。1つは、中国主導で北朝鮮を直接コントロールするというもので、その場合は中国人民解放軍を北朝鮮に進駐させる。例えば駐韓米軍のイメージである。すでに中朝国境に15万人の中国人民解放軍が、配置されている。この根拠法となるのが、


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