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2018/04/13

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第62回 世界が北朝鮮問題の解決方法を探る④                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆平和構築ために南北関係改善を◆

 北朝鮮情勢は、好転しているのか、それとも本質的には何ら変わりがないのか現時点で判断は難しいが、大きく動き始めていることは確かである。3月26日に北京の人民大会堂で習近平主席と金正恩委員長による「中朝首脳会談」が行われた。また、文在寅大統領と金正恩委員長による「南北首脳会談」が、4月27日に軍事境界線にある板門店で開催されることが決まった。さらには、ドナルド・トランプ大統領と金正恩委員長による「米朝首脳会談」も同年5月に開催することで合意している。他にも「日朝首脳会談」や「ロ朝首脳会談」に向けた動きもあるとの分析がある。

 世界の多くの国が、北朝鮮問題の解決に向けて様々方法でアプローチしている。その方法は、大きく分けて「圧力の強化」と「対話の努力」である。今号からは、「対話の努力」に努めている世界各国の動向を分析する。

 米国は、「圧力の強化」を図る一方、対話・交渉を求め、段階的に核を放棄させる提案を行おうとする動きもある。具体的には、まずは核開発を凍結させ、段階的に放棄させる。その見返りに、経済・エネルギー支援や米朝・南北・日朝国交正常の道筋を提示する。経済・エネルギー支援の金額は、北朝鮮は10兆円以上を求める一方、日米韓や国際社会が支援できるのは1兆円程度と予測されている。因みに武力衝突が起きれば経済損失は、100兆円(1兆㌦)に上ると試算されている(韓国駐留米軍司令官)。

 対話の基本思想は、「韓半島における平和構築のために南北関係改善を実現し、核・ミサイル問題解決を通じて米朝関係の改善を図り、日朝国交正常化を通じて本格的な北朝鮮の経済再建と南北の経済統合の促進を可能にする」というものである。過去の対話事例を3つ紹介する。1つ目は、「1994年北朝鮮核危機の対応」である。94年北朝鮮核危機(第2次朝鮮戦争の危機)の時にクリントン大統領(当時)の了解のもと、カーター元大統領が平壌を訪問した。金日成主席(当時)と会談し、北朝鮮が国際査察団の調査を受け入れ、核開発を凍結すること。また、米朝国交正常化への枠組みで米国と合意した。その見返りとして韓半島エネルギー開発機構(KEDO)を通じて北朝鮮に対し軽水炉2基と重油年間50万㌧を供与することとなった。

 KEDOは、日本、米国、韓国、アルゼンチン、豪州、カナダ、チリ、ウズベキスタン、インドネシア、ニュージーランド、ポーランド、チェコなど12カ国1機関で構成されている。

 このプロジェクトには、総額約2000億円が投じられた。韓国の輸出入銀行が11億4300万㌦、日本の国際協力銀行(JBIC)が4億㌦(400億円)をKEDOに貸し付け、建設を請け負った韓国電力も数億㌦を投じた。

 しかし、北朝鮮が軽水炉の建設と重油の提供に向けた作業の進捗状況に不満を示し、98年8月に日本上空を飛び越える形でミサイル「テポドン1号」を発射した。このプロジェクトは、失敗に終わったが、2017年10月カーター元大統領(93歳)が、再度、訪朝の意思を示している。94年(故金日成主席と会談)、10年、11年の3回の訪朝実績がある。北朝鮮が求める朝鮮戦争休戦協定の平和協定への転換や北朝鮮の核開発凍結などについて協議したいとしている。

 2つ目は、


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