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2018/05/18

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第63回 世界が北朝鮮問題の解決方法を探る⑤                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆「対話の仲介」を務める各国の事例◆

 北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題は、解決に向けて大きく動き始めている。北朝鮮問題は、本当に解決の方向に向かっているのか疑心暗鬼であるが、金正恩委員長が積極的に外交を展開しているということだけは事実である。2018年3月中朝首脳会談に次いで、4月27日に文在寅大統領と金正恩委員長による南北首脳会談が開催され、「韓半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」が発表された。この「板門店宣言」の趣旨とメッセージは、13項目638語に凝縮された。主な内容は、①韓半島の完全な非核化の実現、②休戦状態の朝鮮戦争の終戦を18年内に目指して停戦協定を平和協定に転換し、平和構築に向けた韓国・北朝鮮・米国3者、または韓国・北朝鮮・米国・中国4者会談を開催すること、③北朝鮮の開城に南北共同連絡事務所を設けること、④離散家族の再会、⑤文在寅大統領が今年秋に平壌を訪問することなどである。また、ドナルド・トランプ大統領と金正恩委員長による米朝首脳会談が決定しており、6月中旬の開催が予定されている。世界の多くの国が北朝鮮問題の解決に向けて様々な方法でアプローチが行われている。その方法は、大きく分けて「圧力の強化」と「対話の努力」である。前号から引き続き、「対話の努力」に努めている世界各国の動向を分析する。

 過去の対話事例として、1つ目の1994年米国カーター元大統領と金日成主席(当時)による平壌会談と2つ目の「現状維持、北朝鮮の転覆、北朝鮮の改革、吸収合併」を求めない前提で、核放棄の見返りに北朝鮮の体制を保証する「ペリープロセス」は、前回紹介した。

 今回は、3つ目の対話事例として、「6カ国協議」を紹介する。05年に採択された6カ国協議の共同文書で北朝鮮核問題の解決策が合意された。6カ国協議とは、北朝鮮の核問題解決のため関係国6カ国(米国・韓国・北朝鮮・中国・ロシア・日本)の担当者が直接協議を行う会議である。共同文書には、「ペリープロセス」の考え方が反映された。しかし、共同文書は、実践されていない。また、6カ国協議も03年8月第1回~07年3月第6回までいずれも中国北京で計9次の会合が行われたが、それ以降、開催されていない。この間隙を突いて主導権を奪うが如くプーチン大統領は、17年4月の日ロ首脳会談で6カ国協議の再開を提唱した。しかしながら6カ国協議は、18年5月時点で再開されていない。

 「対話の努力」で最もシンプルでストレートな方法は、金正恩委員長と直接対話することである。それでは、どの国の誰が、先に金正恩委員長と対話すべきか。やはり6カ国協議メンバー国のリーダー5名の誰かが対話に臨むべきではなかろうか。5名とは、中国・習近平主席(64歳)、韓国・文在寅大統領(64歳) 、米国・トランプ大統領(71歳)、日本・安倍首相(63歳)、ロシア・プーチン大統領(65歳)である。1人で対話に臨むこともあるが、複数、もしくは全員が対話に臨むこともある。すでに習近平主席と文在寅大統領が、直接対話を実現した。ここで大事なことは、金正恩委員長に同じメッセージを伝えることである。各国の各リーダーは、それぞれ立場や思惑があるだろうが、それぞれ違ったメッセージを伝えればかえって不信感を与え、事態はさらに悪化するだけである。

 世界の国々は、北朝鮮問題を他人事とは見做さず、当事者意識をもって問題解決に臨んでいる。ここでは、「対話の仲介」を務める各国の事例を紹介する。1カ国目は、スイスが、北朝鮮問題の解決に向けて対話の仲介役を務めている。スイス軍は、スウェーデン軍と共に53年10月以降64年間、「中立国監視委員会(スイスとスウェーデンの2カ国)」として、韓国と北朝鮮の国境(38度線、板門店)に配置されており、停戦協定遵守の監視を行っている。同委員会は毎週火曜日、最新情勢について北朝鮮と韓国に送付する報告書を作成している。スイスは、


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