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2018/10/12

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第68回 米朝首脳会談と激変する韓半島・北東アジア④                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆水面下でしたたかな交渉繰り広げる◆

 2018年6月12日に実現した史上初の米朝首脳会談について分析・評価し、今後の韓半島、さらには北東アジアの行方を考える。史上初の米朝首脳会談の実現に至る過程では、関係国間においてそれぞれの思惑や外交戦略に基づく綱引きが熾烈を極め、水面下でしたたかな交渉が繰り広げられた。米朝首脳会談の実現までの経緯について前号に引き続き分析する。

 2018年3月9日にトランプ大統領が、金正恩委員長と会談する意向を明らかにするや否や3月28日に金委員長が電撃的に訪中し、習近平主席と会談した。この会談は、胡錦濤主席と金正日総書記との会談(2011年5月26日)以来、実に7年ぶりの中朝首脳会談であり、習主席と金委員長との初めての会談であった。この会談では、中朝関係を改善することで一致すると共に金委員長が非核化への意思を示し、両首脳は韓半島情勢の緊張緩和に向けて協力することを確認した。

 具体的には、金委員長が習主席に韓半島情勢を伝えるために訪中したと説明する一方、習主席が「特別なタイミングの訪中」と評価した。また、金委員長が、韓半島の非核化の取り組みを「不変の立場」と主張すると共に南北関係を和解・協力関係に変えることを決意し、南北首脳会談や米朝首脳会談を決めたと言及した。

 習主席は、北朝鮮の努力を称賛した。さらに、習主席が、伝統的な中朝関係を維持するためハイレベルの高官の往来、戦略の意思疎通、民間交流などを提案し、金委員長が同意した。4月21日に金委員長は、党中央委員会総会の報告で「核実験や中長距離ミサイル、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射も必要がなくなり、北部核実験場も使命を終えた」と述べた。このような北朝鮮の非核化の意思を承知していてのことか4月24日トランプ大統領が、米朝首脳会談で北朝鮮に核兵器の廃棄を求める意向を表明した。

 北朝鮮を取り巻く国際情勢は、北朝鮮が非核化の意思を示す一方、米国と中国がそれぞれの思惑や外交戦略にしたがって手を差し伸べた結果、軟化し始めている。4月27日の南北首脳会談は、このように韓半島情勢の緊張が緩和し、国際環境が整えられたタイミングで開催された。文大統領と金委員長が署名した「韓半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」の主な内容は、以下の通りである。①南と北は、南北関係の全面的で画期的な改善と発展を成し遂げることにより、途絶えた民族の血脈をつなぎ、共同繁栄と自主統一の未来を引き寄せていく。②南と北は、韓半島で尖鋭な軍事的な緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するために共同で努力していく。③南と北は、韓半島の恒久的で強固な平和体制構築のために積極的に協力していく。

 改めて「板門店宣言」の意義と共に遂行状況を確認する。1つ目は、


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