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2018/11/09

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第69回 米朝首脳会談と激変する韓半島・北東アジア⑤                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆「韓半島の春」が北東アジアの繁栄と平和に大きく貢献◆

 史上初の米朝首脳会談について分析・評価し、今後の韓半島、さらには北東アジアの行方を考える。米朝首脳会談の実現に至る過程では、関係国間においてそれぞれの思惑や外交戦略に基づく綱引きが熾烈を極め、水面下でしたたかな交渉が繰り広げられた。米朝首脳会談の実現までの経緯を詳細に分析する。

 5月8日に米中首脳による電話会談が行われた。習近平主席が、開催予定の米朝首脳会談を支持した上で「北朝鮮側の安全に対する関心事を考慮すべきだ」と求めた。また、「米朝が相互信頼を打ち立て、段階的に行動すべきだ」とも強調し、米朝会談に向けた「仲介役」としての立場を鮮明にした。5月9日、2回目の中朝首脳会談が開催された。中朝首脳会談では、「深刻な変化が起きている韓半島周辺情勢」について意見交換した。金正恩委員長は、「関連国が対北敵対政策と安全への脅威をなくせば、核を保有する必要はない」、「朝米対話で信頼を構築し、関連国が段階別、同時に責任ある措置で韓半島の非核化を実現することを望む」と述べた。同日北朝鮮が、拘束していた米国人3人を解放した。5月10日トランプ大統領が、ツイッターで金委員長との首脳会談を6月12日にシンガポールで開催することを明らかにした。5月10日、日中韓首脳会談が開催された。日中韓首脳は、韓半島の完全な非核化という共通の目標を確認すると共に北東アジアの平和と安定に向け引き続き緊密に協力していくことで一致した。また、どうすれば北朝鮮が正しい道を歩み、明るい未来を描いていくことができるのか、その道筋について率直な意見交換を行った。安倍首相は、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、北朝鮮が正しい道を歩むのであれば「日朝平壌宣言」に基づき不幸な過去を清算し、国交正常化を目指すとの考えに変わりない旨を述べた。5月22日の米韓首脳会談では、トランプ大統領が、北朝鮮に短期間で完了する包括的な非核化の合意を受け入れるよう強く求める考えを示した。

 5月24日北朝鮮が、米朝首脳会談の再考を示唆した。また、北朝鮮が、予告していた北東部・豊渓里の核実験場の廃棄作業を公開した。しかしトランプ大統領は、6月12日にシンガポールで開催が予定されていた米朝首脳会談を中止する考えを表明した。トランプ大統領は、「米軍は世界で最強だ。必要であれば、軍事的措置の準備はできている」と強調する一方で、「金正恩氏が対話を選ぶなら、私は待っている」とも述べた。5月25日トランプ大統領が、自ら中止を表明した米朝首脳会談について、ツイッターへの投稿で予定通り6月12日にシンガポールでの開催を目指す意向を強く示唆した。

 5月26日、


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