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2018/02/16

<オピニオン>転換期の韓国経済 第96回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第96回 

◆遠心力と求心力が働く日韓経済関係◆

 17年の韓国の実質GDP成長率は3・1%(速報値)と、3年ぶりに3%台に乗った。成長率が17年初の予想(韓国銀行は2・5%)を上回ったのは、建設投資の増勢が続いたこと(住宅投資の増加と五輪関連プロジェクトの押し上げ効果)と、半導体産業で輸出と設備投資が急増したことによるものである。

 昨年の半導体輸出額(通関ベース)は輸出全体の伸びの15・8%増を大幅に上回る57・4%増となり、全体の17・1%を占めるまでにいたった。世界的に広がる第四次産業革命が追い風になっている。

 昨年7月に平澤工場(器興、華城につぐ第三工場)が稼働したサムスン電子では、半導体の売上げが急伸し、過去最高の営業利益を記録した。過去のシリコンサイクルと異なり、世界的な第四次産業革命の進展に支えられて、需要増加がしばらく続くとの見方が多く、サムスン電子も平澤工場に第二製造ラインを建設していく計画である。

 韓国の半導体産業をめぐる動きをみると、いくつか興味深いことがわかる。

 第1は、メモリの輸出は中国と香港向けが圧倒的に多く、フィリピン、ベトナム、台湾、ブラジル、日本の順になっていることである。対日輸出に関してみると、メモリは主力輸出品ではあるものの、輸出額は07年(この年は日本は4番目)をピークに著しく減少している(下図)。これには、半導体ユーザーの海外(特に中国)への生産シフトが影響していると考えられる。スマートフォンは一時期日本国内で生産していたが、その後中国への生産シフトが進んだ。

 他方、ベトナム向けが増えた背景には、サムスン電子がベトナムを海外市場向け携帯電話(含むスマホ)の主力生産基地にしたほか、LG電子が大型複合工場を建設し、携帯電話や生活家電などの生産を15年に開始するなど、韓国の半導体ユーザーがベトナムへ生産シフトしたことがある。

 ちなみに、韓国の輸出額に占めるベトナム向けの割合は17年に8・3%へ上昇し、中国、米国に次ぐ3番目の相手国になった。

 第2は、韓国での半導体生産が著しく拡大した結果、昨年、韓国が台湾を抜いて世界最大の半導体製造装置市場になったことである。日本からの輸出も急増したことはいうまでもない。韓国の半導体製造装置の上位輸入相手国は米国、日本、オランダである。

 日本の半導体ユーザーが海外へ生産シフトしたことにより、韓国の日本向け半導体輸出額が減少する一方、韓国の半導体生産の拡大により、日本の韓国向け半導体製造装置の輸出が増加したのである。

 第3は、


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