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2018/03/23

<オピニオン>転換期の韓国経済 第97回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

◆韓国人材を活用する日本企業◆

 この3月に韓国を訪問した際、京畿道や忠清南道で操業している日本の半導体装置メーカーからいろいろ話を伺った。

 前回触れたように、韓国では現在、半導体の輸出と投資が成長の牽引役になっている。半導体需要が牽引する景気回復の持続性に関しては、疑問視する声もある。半導体は他産業と比較して技術革新のスピードが速く、製品サイクルも短いため、需要拡大→設備投資→生産過剰→価格急落というシリコンサイクルが生じるからである。

 しかし、近年半導体需要が好調に推移している背景には、①スマートフォンやタブレット端末の普及、②データセンターに向けた需要の拡大、③半導体用途の広がりなど、これまでと異なるものがある。

 サムスン電子も世界的な第四次産業革命の進展に支えられて、需要増加が続くという見通しの下で、平澤(京畿道)工場に第二製造ラインを建設する。また、華城(京畿道)工場では、次世代の尖端微細プロセスEUVの生産ラインを設置し、ファウンドリー(受託製造)ビジネスを拡大する計画である。メモリへの過度な依存を是正する狙いもある。

 韓国の半導体出荷額の約7割を京畿道が占めているため、半導体製造装置メーカーも各工場の近くにサービス拠点を設置している。

 日本のメーカーの進出も2010年あたりから増加している。韓国での業務はサポート業務が中心であるが、周辺機器の製造や製造装置の組立を行っている企業もある。また、製造装置は顧客と共同で開発することが重要であるため、研究開発拠点を設置する動きも徐々に増えている。

 サポート業務は、製造装置を工場に設置して正常に作動するように調整し、必要に応じてメンテナンスを行う業務である。とくに最近、韓国企業の投資拡大に伴い日本から半導体製造装置の輸出が急増したため、サポート業務に追われている。このため各社とも、エンジニアサービスを担う人材を確保するために、現地採用を増やしている。

 今回の訪問先から伺った話で興味深かったのは、日本の製造装置メーカーも米国、中国にサービス拠点を設けているが、海外工場でのコミュニケーションの関係上、韓国から韓国人の社員を派遣していることである。ちなみに、サムスン電子は韓国以外に、米国(テキサス州オースチン)や中国(陝西省西安)に工場を有している。

 また、韓国では大卒者の就職難が続いているため、希望する人材が容易に採用できること、想定した学歴以上の人が応募してくること、ソウル志向の強い若い人でも京畿道なら働きたいとのことなどである。

 半導体製造装置メーカーの例のように、日本企業にとって現地化を進める上で、またグローバルな事業展開を進める上でも、韓国の人材を活用することが重要になっている。

 日本企業による雇用創出は韓国にとってプラスである。他方、日本がこれから深刻な人手不足・人材不足(特にIT業界)の時代を迎えることを考えると、


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