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2018/09/21

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第67回 米朝首脳会談と激変する韓半島・北東アジア③                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆一転好転し始めた北朝鮮情勢◆

 2018年6月12日に実現した史上初の米朝首脳会談について分析・評価し、今後の韓半島、さらには北東アジアの行方を考える。史上初の米朝首脳会談の実現に至る過程では、関係国間においてそれぞれの思惑や外交戦略に基づく綱引きが熾烈を極め、水面下でしたたかな交渉が繰り広げられた。米朝首脳会談の実現までの経緯を詳細に分析する。

 昨年、2017年の北朝鮮情勢は、悪化に悪化を繰り返す悪循環に陥り、威嚇と脅威がエスカレートし、危機が極限に達して一触即発で戦争が起きる直前にまで至った。それが今年、2018年に入り、一転し、北朝鮮情勢が好転し始めている。

 2018年1月1日金正恩委員長が、新年の辞で「国家核戦力の歴史的大業が完成」と誇示する一方で、韓国・平昌冬季五輪への代表団派遣のため、韓国と協議する考えを表明した。

 この北朝鮮の平昌冬季五輪への参加については、間髪入れずに南北実務者協議を行い、決定した。そして2月9日北朝鮮は、平昌冬季五輪に金正恩委員長の妹である金与正党第1副部長をはじめとする高官や選手・応援団など418人を派遣した。

 また、2月26日の平昌五輪閉会式にも北朝鮮が高官を派遣した。金正恩委員長の最側近である金英哲・朝鮮労働党副委員長(統一戦線部長)が派遣され、文在寅大統領と会談を行ったが、その中で「米国と対話する用意が十分にある」と表明した。この北朝鮮の意思を直ちに米国に伝えるべく、3月2日に米韓首脳による電話会談が行われた。そして3月6日には、韓国が、特別使節団を北朝鮮に派遣した。韓国・鄭義溶国家安保室長が、金正恩委員長と会談し、「南北関係改善への強い意欲を示した」。その後、史上3回目となる南北首脳会談は、4月27日に開催することで正式に合意した。

 3月8日に韓国・鄭義溶国家安保室長は、訪米し、トランプ大統領と面会した。面会の主な内容は、「トランプ大統領と可能な限り早い時期に会いたい。直接会って話をすれば、大きな成果を出すことが出来る」とする金正恩委員長の発言を口頭で伝えることであった。トランプ大統領は、大きくうなずきながら「よし、会うぞ」と即答した。翌日である3月9日には、トランプ大統領が、金正恩委員長と会談する意向を明らかにした。

 なぜ北朝鮮は、武力攻撃も辞さない強気一辺倒から対話に臨む外交戦略に一転させたのか。北朝鮮が態度を急変させた理由について分析する。1つは、核とミサイル(ICBM)の実験・開発を成功・完成させたこと。実際、成功・完成させたかどうかは分らないが、北朝鮮自らがそのように認識することによって、大国と対等に対話ができる自信をつけたと見られる。

 2つ目は、金正恩委員長が政権誕生後6年10カ月間で権力を掌握し、内政が落ち着いたため、国際社会に打って出られると判断したと考えられる。米国の専門家の中には、金正恩委員長を肯定的に評価している専門家もいる。例えば


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