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2019/04/19

<オピニオン>転換期の韓国経済 第110回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第110回

◆注意したい米国の今後の通商政策◆

 韓国の今年の経済成長率は昨年を下回り、2%台前半にとどまる見方が増えている。投資の回復が遅れるほか、米中貿易摩擦と世界経済の減速などの影響により、輸出の低迷が予想されるからである。中国では米中貿易摩擦の影響で輸出が減速し始め、対米輸出は今年に入りマイナスの伸びになっている。韓国の対中輸出の多くは中間財であるため、中国の生産が鈍化すれば、その影響を強く受ける。実際、対中輸出額は昨年11月以降、前年割れが続いている。

 この点からすると、米国トランプ政権の通商政策がどうなるかが、今後の韓国の輸出を大きく左右することになる。

 トランプ政権の通商政策は18年に入って強硬路線に転じた。政権発足後しばらくの間は、極端な保護主義政策がとられることはなかった。政権内で、グローバリズムに立脚する人たちが、米国第一主義に立つ人たちの強硬な主張を抑えていたためである。

 前者を代表するのが当時のコーン国家経済会議(NEC)長やムニューシン財務長官、後者を代表するのが対中強硬派のナヴァロ大統領補佐官、ロス商務長官、ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表である。強硬派の考えが通商政策に反映するようになったのは、コーンNEC議長の辞任(18年3月)前後あたりからである。2月末にUSTRが議会に提出した「18年通商政策アジェンダ」に彼らの考えが端的に示された。

 「トランプ大統領は外国の市場を開放させ、より効率的な世界市場を得て、米国の労働者がより公正に扱われるよう、世界最大規模の米国経済力を利用していく決意で貿易関連の課題に取り組んでいる」としたうえで、①米国の安全保障の支援、②米国経済の強化、③より良い貿易協定の締結、④米国の通商関連法の執行強化、⑤多角的貿易体制の改革、という5つの柱により、米国の貿易政策を推進していくことが明記された。

 実際の動きをみると、1月に、トランプ政権は米通商法201条にもとづき、大型洗濯機や太陽光パネル(主な輸入先は韓国、中国)に対してセーフガードを発動した。3月に、米通商拡大法232条(安全保障上の脅威がある場合に制裁が可能)にもとづき、鉄鋼・同製品とアルミニウム・同製品に対して追加関税を課すことを決定した。

 その後、中国による知的財産権の侵害を理由に、米通商法301条(外国による不公正な貿易慣行がある場合に制裁が可能)にもとづく制裁を実施し、総計2500億㌦相当の製品に対して追加関税を課した。他方、韓国に関しては、「18年通商政策アジェンダ」で、米韓FTAは当初の期待を大きく下回っていると指摘された。トランプ政権は米韓FTAが双方にとって互恵的なものとなることを求めて、


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