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2019/02/08

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第71回 米朝首脳会談と激変する韓半島・北東アジア⑦                                                    多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

  • 多摩大学アクティブラーニング支援センター長 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部および大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆未だ後退せず前進する北朝鮮情勢◆

 史上初の米朝首脳会談について分析・評価し、今後の韓半島、さらには北東アジアの行方を考える。北朝鮮情勢は、2017年は過去最悪の状況であったが、2018年には一転・好転し、過去最高の状況となった。例えば、米朝首脳会談(6月)が歴史上初めて開催されたこと。また、6カ月間(3月~9月)という短い期間に南北首脳会談が3回(4月、5月、9月)、中朝首脳会談が3回(3月、5月、6月)、韓日中首脳会談(5月)が開催された。

 さらに、2019年に入っても1月に4回目の中朝首脳会談が開催されたり、2月27、28の両日には2回目の米朝首脳会談が決定するなど北朝鮮情勢は未だ後退することなく、前に進んでいる。これまでの北朝鮮の外交パターン「危機(クライシス)→交渉(ネゴシエーション)→合意(アグリメント)」(1994年、2005年、2012年の3回)であれば、もうすでに新たな危機(クライシス)に陥っていたであろう。

 今号は、2018年から今年にかけて4回開催された中朝首脳会談について分析する。2018年3月に中国北京市で開催された1回目の中朝首脳会談を分析し、評価する。

 主な会談内容は、以下の通り。7年ぶりとなる中朝首脳会談では、中朝関係を改善することで一致した。金正恩委員長は、非核化への意思を示し、両首脳は韓半島情勢の緊張緩和に向けて協力することを確認した。金委員長は、韓半島情勢を伝えるため、習近平主席の訪中要請に応じたと説明した。これに対して習主席は、「特別なタイミングの訪中」と評価した。金委員長は、韓半島非核化の取り組みを「不変の立場」と主張した。南北関係を和解・協力関係に変えることを決意し、南北首脳会談や米朝首脳会談を決めたと言及した。習主席は、北朝鮮の努力を称賛した。一方、習主席は、伝統的中朝関係の維持のためハイレベル高官の往来、戦略の意思疎通、民間交流などを提案した。金委員長も同意した。さらに、中朝首脳会談の終了後には、金委員長が「段階的で同時並行的な措置が必要」と述べた。1回目の中朝首脳会談から読み取れることは、1つは「段階的で同時並行的な措置」の必要性を強調していること。それも中朝首脳会談の終了後に述べたところに金委員長の本音が垣間見える。

 2018年5月に中国遼寧省大連市で開催された2回目の中朝首脳会談の主な内容は、以下の通り。両首脳は、「深刻な変化が起きている韓半島周辺情勢」について意見交換した。金委員長は、「関連国が対北敵対政策と安全への脅威をなくせば、核を保有する必要はない」、「朝米対話で信頼を構築し、関連国が段階別、同時に責任ある措置で韓半島の非核化を実現することを望む」と述べた。

 2018年6月に中国北京市で開催された3回目の中朝首脳会談の主な内容は、以下の通り。金委員長は、先の米朝首脳会談について「双方が一歩ずつ合意を履行すれば、非核化は新たな重大局面を迎える」と述べ、非核化を段階的に進めるべきだと主張した。習主席は、「国際情勢がどう変わっても中朝関係を発展させる立場は不変だ」と述べ、後ろ盾として北朝鮮を支える方針を強調した。

 2019年1月に中国北京市で開催された4回目の中朝首脳会談の主な内容は、以下の通り。


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