ここから本文です

2019/05/17

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第74回 ロ朝首脳会談と韓半島・北東アジアの行方①                                                    多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部及び大学院経営情報学研究科(修士・博士課程)教授、アクティブ・ラーニングセンター長。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。㈱三井物産戦略研究所を経て現職。

◆伝統的な友好関係を内外に改めてアピール◆

 2019年4月25日ロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と金正恩委員長との初のロ朝首脳会談が開催された。ロ(ソ)朝首脳会談は、1948年朝鮮民主主義人民共和国の建国以来、11回目である。過去10回のロ朝首脳会談は、以下の通り。1回目は、1949年3月モスクワでスターリンソ連書記長(故人)と金日成首相(当時肩書、故人)の会談。2回目は、1950年4月モスクワでスターリン書記長(同)と金日成首相(同)の会談。3回目は、1961年7月モスクワでフルシチョフソ連首相(故人)と金日成首相(同)の会談。4回目は、1965年2月平壌でコスイギンソ連首相と金日成首相(同)の会談。5回目は、1984年5月モスクワでチェルネンコソ連書記長(故人)と金日成主席(肩書変更、故人)の会談。6回目は、1986年10月モスクワでゴルバチョフソ連書記長と金日成主席(同)の会談。7回目は、2000年7月平壌でプーチン大統領と金正日総書記(故人)の会談。8回目は、2001年8月モスクワでプーチン大統領と金正日総書記(同)の会談。9回目は、2002年8月モスクワでプーチン大統領と金正日総書記(同)の会談。10回目は、2011年8月東シベリアでメドベージェフ大統領(当時)と金正日総書記(同)の会談であった。

 今回のロ朝首脳会談の主な内容と歴史的背景を分析し、韓半島・北東アジアの行方を考察する。この主な内容と歴史的背景は、3つにまとめる。1つ目は、2019年2月27日及び2月28日に開催された2回目の米朝首脳会談の決裂を踏まえ、核問題や韓半島情勢を改善するための連携強化で一致したこと。金委員長は、「韓半島問題が原点に戻りかねない」、「韓半島の平和と安全は、米国の今後の態度によって左右される」と述べた。この発言から金委員長が、米国を牽制し、態度を変えるよう要求していると読み解ける。これを裏付けるように4月26日付の朝鮮中央通信は、「2月の米朝首脳会談は、米国が一方的で誠意のない態度を取ったことによって情勢が膠着状態に陥った」と批判しており、「今後は米国の対応次第であらゆる状況に備える」と警告している。

 2つ目は、伝統的な友好関係の強化をアピールしたこと。北朝鮮は、1948年に建国されるや否やソ連と国交を樹立した。また、1961年7月6日にソ連との間で「ソ朝友好協力相互援助条約」を締結した。この条文は、第6条で構成されており、第1条は「どちらか一方の国が第3国から攻撃を受けた場合、共同で軍事行動を行う」という軍事同盟条項となっている。したがってソ連は、「ソ朝友好協力相互援助条約」によって初めて北朝鮮を直接、軍事的に支援することが可能となった。

 北朝鮮は、1961年7月11日に中国とも同様の軍事同盟条約である「中朝友好協力相互援助条約」を締結した。したがって中国も「中朝友好協力相互援助条約」によって公然と中国人民解放軍が北朝鮮を軍事的に支援できるようになった。「中朝友好協力相互援助条約」は、20年毎に自動的に更新されるため、1981年と2001年に更新されており、次は2021年に更新される予定である。ただ2001年更新時に中国は、「無条件に北朝鮮を軍事支援する」から、


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>