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2019/06/14

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第75回 ロ朝首脳会談と韓半島・北東アジアの行方②                                                    多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部及び大学院経営情報学研究科(修士・博士課程)教授、アクティブ・ラーニングセンター長。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。㈱三井物産戦略研究所を経て現職。

◆中国とロシアの後ろ盾を得た北朝鮮◆

 2019年4月25日に開催されたロ朝首脳会談の主な内容と歴史的背景を分析し、韓半島・北東アジアの行方を考察する。前号にて、ロ朝首脳会談の主な内容と歴史的背景の分析結果を3つにまとめた。今号は、この分析結果にさらに考察を加える。新たに浮かび上がった疑問点は、3点である。1つは、「ロ朝が共同で地域の安定と情勢の管理を図る」とは、何を意味するのか。2つ目は、なぜ北朝鮮は、ロ朝首脳会談直後である5月4日に9発、5月9日に2発、計11発の短距離ミサイルを発射したのか。3つ目は、ロ朝の軍事同盟関係は、解消されたが、実際のところどのようになっているのか、ということである。

 ロシア(ソ連)と北朝鮮の関係は、1961年7月6日に「ソ朝友好協力相互援助条約」を締結した。この条文の第1条は、「どちらか一方の国が第3国から攻撃を受けた場合、共同で軍事行動を行う」という軍事同盟条項となっている。したがってソ連は、この条約によって北朝鮮を直接、軍事的に支援することができる。

 しかし、1991年ソ連崩壊により1996年に破棄・失効された。その後、ソ連崩壊により成立したロシアは、2000年2月に軍事同盟条項を削除した「ロ朝友好善隣協力条約」を締結し、軍事同盟の関係から親密な友好国家の関係に切り替わった。「ロ朝友好善隣協力条約」は、北朝鮮では2000年4月に開催された最高人民会議第10期第3次会議で批准された。ロシアでは、2000年7月のプーチン大統領の訪朝に合わせて下院議員全体会議で批准された。2000年2月に締結された「ロ朝友好善隣協力条約」の有効期限は、10年間であるが、一方が破棄を通告しなければ5年間自動延長される。したがって更新は、2010年、2015年の次は2020年2月である。繰り返すが、「ロ朝友好善隣協力条約」は更新されているものの、軍事同盟関係は解消されたままである。

 そこで今回のロ朝首脳会談で合意された「共同で地域の安定と情勢の管理を図る」というのは、何を意味するのであろうか。「共同で地域の安定と情勢の管理を図る」ためには、軍事関係が必要ではなかろうか。5月3日米ロ電話首脳会談でトランプ大統領が非核化を実現するため北朝鮮への制裁を維持する重要性を訴える一方、


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