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2019/04/26

<オピニオン>韓国経済講座 第216回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

  • 韓国経済講座 第216回

◆国家の家計簿はどうなっている?◆

 輸出が低迷している。今年の輸出実績は、韓国貿易協会の統計によると2019年1月では461・5億㌦(前年同月比6・2%減)、2月は394・3億㌦(同11・4%減)、3月471・1億㌦(同8・2%減)と絶対額は変動しているものの、昨年との月別比較では各月10%前後の減少が続いている。

 報道によると半導体の価格・輸出量の低下が大きな原因となり、加えて中国への輸出減少などの理由も指摘されている。輸出依存度が大きい韓国では、こうした状況が続くと国内経済にも看過できない影響が出ると懸念されている。つまり、韓国の成長領域が外需とその生産関連部門に偏向しており、これらが国民経済をけん引しているからである。他方、内需関連部門は相対的に消費能力が弱く、経済全般を引き上げる成長力はさほど期待できない。要するに成長力において、内外需格差が際立って(二極化)限界格差までに達しているのである。

 ところで、こうした状況を国家の家計簿でみるとどのように映るであろうか。国家の家計簿とは、一国の一定期間の対外取引をまとめた国際収支表のことである。国際収支統計は、「経常収支」、「資本収支」、「外貨準備増減」、「誤差脱漏」の四大項目から構成されており、収支(一連の収入と支出の差引残額)で示されている。日本では「外国為替及び外国貿易法」の規定に基づき、財務大臣から委任を受けて、日本銀行国際局国際収支統計担当が集計・推計している。

 さて、国際収支表は家計簿と同様、一定期間の国家の収支状況を示すものであるが、この変化を長期的に捉えて国際収支が経済の発展に伴い、段階を負って変化していくとする考え方が国際収支発展段階説と呼ばれるものである。つまり、国際収支は一国の対外経済活動を体系的に記録したものであるので、経済が発展し対外経済活動の内容が変化するにつれ、国際収支構造も変化すると言う考えである。これは、1950年代に経済学者のクローサー(1907~72年)やキンドルバーガー(1910~2003年)によって提唱された仮説である。

 国際収支は6つの段階に分けられ、表示されている通りである。

 リーマンショックが起こった08年はその前後から世界貿易の縮小で、韓国の貿易量も減少した。経常収支も縮小し、また海外投資の減少で資本収支も僅かな黒字となった。他方、国内から大量の外資が流出(資本逃避)し、外貨保有はマイナスとなった。09年ではIMFからの緊急融資、米国、日本、中国などの外貨支援もあり、外貨増減は大幅な黒字を記録した。輸出の回復で経常収支も大幅黒字を計上し、海外投資も回復して資本収支は流入より流出が上回りマイナスとなった。韓国はこの段階で、債務返済国の段階と見ることができよう。その後の状況を見ると、輸出の増大と海外旅行者誘致などによるサービス収支の黒字などで経常収支の大幅黒字が続いている。それらが外貨増減を堅調に増加させる要因となっている。国際収支発展段階説では、一国の国際収支は、「経常収支」とそれを構成する「貿易収支(財とサービス収支)」と「所得収支」の三つの項目が、それぞれプラス(黒字)か、マイナス(赤字)かという組み合わせによってその段階を判断する。韓国の経常収支が大きなプラスが続いていることは、貿易収支に支えられた経常収支黒字の「未成熟の債権国」の段階を維持し続けていることを意味している。半面、


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