ここから本文です

2021/12/10

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第106回 ユーラシア地政学の視座と経営環境認識③                                                   多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

  • 韓国企業と日本企業 第106回 ユーラシア地政学の視座と経営環境認識③                                                   多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部及び大学院経営情報学研究科(修士・博士課程)教授、アクティブ・ラーニングセンター長。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。㈱三井物産戦略研究所を経て現職。

◆米中覇権争いが世界の貿易や投資に影響◆
 
 米国と中国が相互に経済を切り離すデカップリングは、「通商政策を巡る対立」から「安全保障を巡る対立」、さらには自由・民主主義・法に基づく支配など「普遍的な価値観を巡る対立」へとエスカレートしている。最早、「米中新冷戦」、「米中ヘゲモニー(米中覇権争い)」と言っても過言でない。この背景には、ここ10年間の中国の経済的台頭とそれをテコにした政治・軍事的勢力の拡大や国際法に基づかない現状変更への懸念や対抗意識がある。

 米中デカップリングは、世界の貿易・投資やサプライチェーンのみならず、科学・技術や教育の分野にも影響が出ている。米国では、中国への貿易・投資規制の強化や中国人留学生・研究者の受け入れの厳格化などモノやカネだけでなく、技術やヒトにも影響が広がり始めている。また、中国の科学・技術力の目覚ましい発展・成長は評価されるべきことであるが、これらの軍事転用が懸念されている。中国は、2014年研究開発費がEUを抜いて世界2位、2018年英文学術論文数で世界1位、2019年国際特許出願数で世界1位となった。そこで各国は、大学などが諜報機関の暗躍の場になっているのではないかとの強い疑念を抱くようになった。例えば米国では、2018年に国防授権法が制定され、大学は制裁の対象国や企業との共同研究ができなくなった。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>