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2021/07/09

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第98回 コーポレートガバナンスと地政学情報②                                                   多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

  • 韓国企業と日本企業 第98回 コーポレートガバナンスと地政学情報②                                                   多摩大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科 金 美徳 教授

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部及び大学院経営情報学研究科(修士・博士課程)教授、アクティブ・ラーニングセンター長。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。㈱三井物産戦略研究所を経て現職。

 米中デカップリング(切り離し論)は、世界の貿易・投資やサプライチェーンで加速しており、技術・研究や教育の分野にも広がり始めている。例えば米国は、経済・軍事両面の競争力の決め手となる中核部品や中国・新疆ウイグル自治区の人権問題などを争点にして、中国通信機器大手ファーウェイ社の半導体やファーストリテイリング社が「新疆生産建設兵団」で生産した綿を使用した綿シャツ(ユニクロは使用していないと主張)の輸入を禁止した。

 2021年6月トヨタの株主総会では、米中対立による輸出規制や不買運動などが懸念された質問があった。この質問に対して上田達郎・中国CEOは、「現地生産の車両は、部品の8割以上を現地で調達している」、「トヨタがしっかりと中国に役に立っていると思ってもらえるような活動を一生懸命やる」と述べた。

 このように米中デカップリングは、日本の株主総会やコーポレートガバナンスにも影響を与え始めている。さらには、日中デカップリング(技術流出)や日韓デカップリング(輸出規制)にも飛び火し、加速させる結果を招いている。

 まさしく、世界各国は、米国と中国のどちらの側に立つのか踏み絵を迫られている。これは、日本企業とて同じであり、米中・日中・日韓デカップリングへの対策として、否応なく「経済安全保障」を強く意識せざるを得なくなった。


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