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2009/04/03

<フォトニュース> キム・ヨナ選手「フィギュア女王」に

キム・ヨナ選手「フィギュア女王」に

 「韓国の至宝」キム・ヨナ(金妍兒、18)選手が、国際スケート連盟の世界フィギュア選手権大会で史上初の200点を超す世界最高得点で優勝、女子フィギュアの歴史を塗り替えた。フリーの演技が終わるや、米ロサンゼルスのステープルズ・センターを埋めた1万8000人の観衆が総立ちになり、歓声をあげ、会場は興奮に包まれた。「フィギュア・クイーン」(米ニューヨーク・タイムズ)誕生の瞬間だ。

 他の選手を寄せ付けない圧巻の演技だった。ヨナ選手は前日のショートプログラム(SP)で自己が持つ世界記録を更新する76.12点を獲得したのに続き、29日午前(日本時間)のフリーでも131.59の高得点をあげ、合計207.71点をマークした。これは2006年に浅田真央選手が立てた女子シングル最高得点(199.52点)を8.19点上回る前人未到の大記録だ。

 2位カナダのジョアニー・ロシェット選手(191.29点)に16・42点差をつけ、3位安藤美姫選手(190.38点)、ライバルの4位真央選手(188.09点)に大差をつけての圧勝だった。国際スケート連盟が2003~04シーズンに導入した新審査基準で200点を突破したのは、ヨナ選手が初めて。フィギュアの世界選手権で韓国選手が優勝したのも初めてだ。ヨナ選手は過去2回GPファイナルに優勝しており、今年1月の4大陸選手権優勝に続き、今回の世界選手権初制覇で、残るは来年2月のバンクーバー冬季五輪の金メダルだけとなった。

 フィギュアの採点は技術点とプログラム構成点の合計で決まる。ヨナ選手は今回、芸術性でも目覚しい進歩をとげた。構成点のうち、スケート技術、要素のつなぎ、演技表現実行力、振り付け、曲の解釈という5つの要素で平均スコアが唯一8点台を記録した。ジャンプは最高度の質を誇り、スピン、スパイラル、ステップも文句なしだった。ジャンプの3回転サルコウが1回転半になるミスを全く感じさせない演技だ。

 地元の米メディアは、「これは世界選手権というよりも即位式に近かった」(NBCテレビ)「すべての女子フィギュアスケート選手の理想」(ロサンゼルス・タイムズ)と絶賛。世界選手権を5回制覇したミシェル・クワンさんは、「キム・ヨナ選手の演技は信じられないほどだ」と驚嘆の声をあげた。ヨナ選手は、「怪我もなく最高のコンディションを維持しながら、準備できた。練習するうちに優勝できると自信が生まれ、緊張せずに練習通りの演技ができた」と述べた。

 表彰台で愛国歌(韓国国歌)が流れると、ヨナ選手の肩が震え、涙が頬を伝った。「これまでは表彰台で愛国歌を聞き涙がでそうになっても我慢してきたが、きょうはあまりにも待ち望んでいた場だったので、涙があふれてしまった」という。

 李大統領は、ヨナ選手に電話をかけ、「自信をもってよく頑張った。多くの国民に大きな勇気と希望を与えた」と賞賛した。

 経済効果も大きい。韓昇洙総理はヨナ選手に送った祝電で、「韓国の国家ブランドを世界中に高める契機になった」と強調。専門家らは「英国であればベッカム、ロシアならシャラポワのような国家ブランド上昇効果があるワールドスターだ。ヨナ選手の経済効果は数千億ウォンにのぼる」とソロバンをはじいた。 

 フィギュア後発の韓国で奇跡のように出現したヨナ選手の陰には母親の存在があった。満5歳になる1996年7月、母親の手を握り、初めて京畿道果川市のアイスリンクに行った。この時から母娘の人生が変わった。午前9時から翌日の午前1時まで、一日16時間練習に付き添う「苦難の生活」が始まった。ヨナ選手の母親は、娘の友だちであるとともに、運転手兼マッサージ師兼鬼コーチだった。さらに、英語の教師でもあった。13年もの間、「フィギュアママ」が寄り添っていたのだ。

 韓国では、設備などのスケートインフラは大きく立ち遅れている。フィギュア人口も少なく裾野は狭い。しかし、「ヨナオンニ(ヨナ姉さん)に続け」とフィギュアブームが巻き起こっている。アイスリンクの建設計画が相次ぎ、ファン層も拡大している。ヨナ選手は、明らかに女子ゴルフで朴セリが果たした先駆者の役割をも担っているようだ。