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2001/11/16

<在日社会>日本のかおり風景100選 在日の街、鶴橋を選出

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             キムチのかおり漂う鶴橋商店街

 心地よいと感じる日本全国の「かおり風景」を選出し、環境保護の観点でその風景(景観)を将来に残していくために環境省が公募した「かおり風景100選」に、在日韓国人が多数居住する町、大阪・生野区の「鶴橋駅周辺のにぎわい」が選ばれた。焼き肉の香ばしいかおり、キムチの独特なにおいなどが憩いと安堵感をもたらすと評価された。

 日本の省庁再編で今年1月新たに発足した環境省が、環境保護創出の一環として取り組んだ新プログラムが、今回の「かおり風景100選」選出事業である。

 岩崎好陽・東京都環境科学研究所応用研究部長を座長に、日本環境教育フォーラム常務理事の岡島成行、女優の高木美保、歌人で中央環境審議会瀬戸内海部会委員の道浦母都子さんらからなる「かおり風景100選選定委員会」をつくり、選定にあたった。

 5月下旬から3カ月間かけて募集を行い、自薦、他薦を含め600件の応募があった。それを委員会が審査し、このほど発表した。

 選定にあたってのポイントは3つ。第1に地域の人々に愛されている風景、その地域の景観(自然や文化、生活、歴史などと関わりのある風景)とあわせて将来に残していきたい風景をできるだけ選出。第2に四季折々の自然に恵まれ、古来より伝承されてきた多様な生活文化・風景を選ぶように心がけたこと。第3に可能な限りの情報を収集し、独自性のあるすばらしいかおり風景を選ぶように心がけたことである。

 大阪・生野区の鶴橋駅周辺を推薦したのは、大阪で環境問題に取り組むNGO「地球館パートナーシップクラブ」の会員たち。同クラブは大阪市立環境学習センター「生き生き地球館」の小西事業課長代理が事務局を務め、同館の利用者とともに作ったクラブ。鳥・昆虫などの自然観察、環境学習に取り組んでいる。

 小西さんは、「大阪を考えるとき、在日の人抜きにはあり得ない。日本人と在日で共に作ってきた町だ。特に鶴橋は、庶民的な大阪人と在日の両方の雰囲気が漂っている。100選にぜひ推薦したいと意見が一致した」と話す。

 12日には環境省主催による「かおり風景100選・選定記念フォーラム」が都内で開催、「ふらののラベンダー」「霧ヶ峰の高原と風」などと並んで、「鶴橋駅周辺のにぎわい」に対して認定書の授与が行われた。

 小西さんは「このかおりが残り続けてほしいし、全国の人に紹介したい」と感想を述べた。来春には写真集「かおり風景100選」が環境省から発行される予定だ。


選考理由

 商店街には、焼肉店やキムチなどの食財を扱う店などが建ち並び、焼き肉の香ばしいかおりやキムチなどの独特なかおりが広範囲にわたって漂っている。
 また買い物客とのやりとりなど、庶民的なムードがある。
 失われつつある古き良き風景は、生活者や来訪者に憩いと安堵感をもたらしている。