ここから本文です

2001/01/12

<在日社会>21世紀へメッセージ「在日文化を発信しよう」

21世紀は在日の世紀 金時文・本紙編集局長

 21世紀にどういうビジョンを描けるだろうか。とても大きくて難しいテーマだが、特に10代、20代の若い在日世代に向けメッセージを込めて話してみたい。どういうメッセージかというと、一言でいえば「21世紀は在日の世紀になる」ということである。
 もちろん、そうなるためには各自の努力が必要だが、何も突拍子のない話ではなく、十分理由のあることである。その理由について述べたい。

 21世紀はグローバル時代だという。グローバル時代ということは、世界化であり、活動領域が世界に広がることを意味する。この活動領域の広がりは、在日にとって最大のプラス条件だと思う。

 どういうプラス条件かというと、まず第1に私たち在日60万人をはじめ、米国の200万人、中国、旧ソ連など世界各国に600万人の海外同胞が存在する。いってみれば、私たちの仲間である。同じ海外同胞としての連帯感がある。

 第2に躍進する韓国という祖国がある。最近、日本の学者が「ルックコリア」、つまり韓国に見習おうと提唱している。経済的にも韓国はかつてと比較にならないほど発展しており、途上国の模範になっている。

 第3に南北の雪解けが始まった。まだ紆余曲折はあるだろうが、これから統一祖国に向かって交流・協力が本格化していく。そこに私たち在日が参加できる可能性が開かれている。
 第4に、日本での在日の地位が高くなるだろうということだ。「朝鮮人は臭い」と蔑んだ時代は去り、キムチを日本人も好んで食べ、在日参政権を付与すべきと考える人が多数派を占めている。

 いまでも公務員になれないとか、大企業に入っても昇進できないという問題があるが、もう門前払いはできなくなっている。私たちが学生だった1960年代、70年代は日本の大企業に就職できないことが自明の理だった。職業選択の自由がなかったのだ。それに比べると、21世紀のグローバル時代は、さまざまな領域で活躍できるチャンスが広がっている。そのために知力、体力を磨くことが大切だ。特に韓日の懸け橋としての役割は今後、私たちが考える以上に大きくなるのではないだろうか。在日はもともと、その不確実な生まれゆえに矛盾、葛藤をかかえている。それは金鶴泳、李良枝、柳美里らの小説作品を見てもわかる。また、そのコインの裏表のように創造的な存在でもある。それを生かせる条件ができているいま、在日が頑張れる時代の幕が開いた。

個人主義を大切に マルセ太郎

 私は大阪の朝鮮人密集地・猪飼野の出身。そこで育った思い出を胸に秘めながら、芝居を続けてきた。在日が背負ってきたハンディを、逆に文化に高めようと思ったからだ。
 いまは在日コリアンも日本人も、そして韓国の人たちも、若い世代はほとんど同じになってきている。世の中を変えようというエネルギーが感じられないのが、とても残念だ。
 人間としての資質を高め、自己、そしてそれと同じくらいに他者の存在を大切にするいい意味での「個人主義」の文化を作ってほしい。国家の狭間を生きた在日は、その大切さに気づきやすいはずだからだ。

韓国文化を紹介 金康植・韓国文化院職員

 韓国文化院で映像担当と、学校などの団体見学者の案内を行っているが、韓国文化に対する理解はまだまだ少なく、キムチか焼き肉しか知らない人がまだまだ多い。韓国人の生活習慣、芸術、考え方など深く文化を知ってほしい。映画鑑賞会など文化行事に積極的に取り組みたい。
 また私は在日3世だが、自分がわずかしか知らなかった韓国文化を、ここで働く中で深く知ることができた。また在日の文化には、本国の変化と離れて独自に守られているものがあることも再発見できた。在日の青年たちにどんどん利用してもらって、ルーツの文化や在日共同体の特徴を再認識するのにも活用してもらいたい。

「気力」を伝える 巌雄・元幕内力士

 昨年現役を引退したが、今後は北の湖部屋付きとなって後輩の指導にあたる。スポーツは先のことを考えず、まず目の前の目標に全身でぶつかることが大切だ。
けいこをしっかり行えば、体が自然と反応する。効果的なけいこのアドバイス、けがへの対処法など、長い力士生活で学んだことをすべて伝えたいと思っている。
特に勝負の世界では、相手に負けない”気力”を持って闘うのが大切であることを教えたい。
 28日に国技館で「巌雄引退断髪式 披露大相撲」を行う。これまで応援してくれた方々に感謝の意を示したい。見に来てくれればうれしい。
 私は在日を隠したことがない。子どもには在日であることと礼儀作法、そして生生には気力が必要なことはしっかり伝えるが、あとは在日も日本人も関係なく、自由に生きてもらいたい。

在日の生き様文章に 具秀然・CMディレクター

 2月23日に角川春樹事務所から、自伝風小説「ハードロマンチッカー」を発売する。山口県下関市に住む不良の在日高校生が、在日であることに悩み、バイクやケンカにあけくれながら、青春を生きる物語だ。初めて小説にチャレンジし、1年がかりで書き上げた。
 半分フィクション、半分ノンフィクションの小説で、自分の持って生まれた運命、不幸、理不尽にどう折り合いをつけながら、クールにフラットに生きてきたかを描いている。気楽に読めて元気の出る小説だと思っている。自分がこれまで作り続けてきた、人の本音を引き出すCMにも通じるところがある。
 既成の価値観に引きずられず、自分の価値観を探して生きるのが人生。小説からそれを感じとってほしい。