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2001/11/09

<在日社会>美術を通して人権のメッセージ

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    光州市立美術館名誉館長に任命された河正雄氏と夫人

 在日2世の実業家で美術品収集家の河正雄氏がこのほど、光州市立美術館の名誉館長に任命された。韓日美術文化の振興と交流に尽力してきた河氏は、同美術館にコレクション683点を寄贈、現在、次の寄贈作品を準備中だ。美術館では名誉館長任命とともに、「河正雄 青年作家招待展」を開催し、韓日、在日の若手作家の作品を展示する。同展は12月2日まで開催。

 河正雄さんは埼玉県在住。事業のかたわら、30数年にわたって美術品を収集してきた。ピカソ、シャガールなど世界的に著名な画家の作品だけでなく、韓日そして在日美術家の作品も多数収集してきた。「在日の画家を支援し、在日美術文化の発展に貢献したい」との思いからだ。

 父母の故郷である全羅道の光州市で現代美術の祭典「光州ビエンナーレ」が始まると、同展の支援も行ってきた。2000年3月に開催された第3回光州ビエンナーレでは、名誉広報大使に任命された。

 光州は、80年5月に民主化闘争で多数の犠牲者を出した聖地。同展のテーマも、人権を美術で表現した「人+間」だった。河氏は在日の立場で、「韓国と日本の美術界の密接、親愛なる交流、そして在日の人権」をテーマに打ち出し、「在日の人権展」を開いた。在日の人権をテーマに美術展が行われたのは、韓国で初めてのことだった。

 「在日の存在と意味を問い、在日の人権を韓国・日本で考えてもらいたい。そのための歴史的な展示会にしたかった。韓日の狭間で生きる誇り高き在日が、祖国との友好関係を築くきっかけにもしたかった」と、河氏は話している。

 これまで収集してきた美術品のうち683点を光州市立美術館に寄贈したのも、韓国の美術発展だけでなく在日の存在を本国に提示し続けたいとの思いからだ。河氏はさらに700点を、2002年か2003年に寄贈する計画。

 光州市立美術館は2日、「河正雄 光州市立美術館名誉館長就任式委嘱式ならびに”光・2001”河正雄青年作家招待展」の開幕式を、光州市長など関係者200人が参席するなかで開会した。

 日本からも画家の金石出氏、バイオリン制作作家の陳昌鉉氏など20人が参加した。陳氏は「光州号」と銘々したバイオリンを美術館に寄贈、河正雄コレクションとともに展示される。

 河氏の名前をつけた「青年作家招待展」は、韓国内と在外韓国人などの45歳までの作品を招待・展示するもので「青年作家を育てたい」との河氏の夢を実現するもの。

 河氏は、「貧困の中で育った一個人がここまで出来るということで、多くの人に勇気を与えられればと思う。美術を通して世界の平和と人権に寄与できれば、こんなにうれしいことはない」と話す。