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2001/06/29

<在日社会>大口出資者を7月上旬発表

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      資本金集めについて議論が盛り上がった新銀行設立推進大会

 在日韓国民団が主導する仮称・平和銀行設立構想が走り出した。7月下旬をメドに資本金300億円で金融庁に認可申請するため、現在1口5万円の出資金集めを展開している。もっとも当面は時間がないため、大口出資者がどれだけ集まるかが最大のポイントであり、韓国政府が100億円準備するとの約束も在日社会で200億円集まっての話だ。7月上旬に予定している発起人会で10人前後の大口メンバーを発表できるとしているが、発起人の顔ぶれも新銀行構想を占う大きなポイントになりそうだ。

 金融庁が銀行設立認可で最も重視しているのは資本金であり、どんなに趣旨は素晴らしくても資本金不足の状態で認可はしない。在日社会でこの間、試行錯誤を繰り返した銀行化構想が頓挫したのも、この資本金不足が決定的な原因だった。

 今回の新銀行構想は、民団中央本部と駐日韓国大使館が事前に相談を重ねてきたものだが、出資主体はあくまで在日同胞であり、他力本願ではいられない。

 民団はその出資金集めの最初の公開的な集まりとして6月24日、都内のホテルで平和銀行設立推進大会を開いた。民団員、経済人ら約250人が参加した中で、金宰淑・推進委員長(民団中央本部団長)は「全同胞が参加する出資金募集運動を展開していこう」と訴えた。

 設立業務の実務責任者である鄭進・推進本部長(長野商銀会長)は、新銀行の性格にも触れ、①既存信組との共存共栄を図る②IT化などにも対応、人材・経営整備を進める③在日の潜在力を生かし新たな枠組みをつくる礎石にしたい――と述べた。

 さらに、夫順末・在日韓国婦人会中央本部会長、権清志・在日韓国青年商工人連合会会長も9月開業へ向け、銀行設立に参加しようと熱烈なメッセージを送るなど会場の雰囲気は盛り上がった。

 だが、関西からは民団も経済人も参加は極めて少なかった。ある経済人は「大阪地域では平和銀行に消極的な声が聞かれる。破綻した関西興銀などを引き受ける韓信協の銀行化構想が潰れた影響がありそうだが、今後平和銀行が軌道に乗れば関西の対応も変わってくるだろう」と語った。

 韓信協、韓商との連携が昨年末に合意したように3位1体のように緊密化する課題もある。韓信協会長組合の横浜商銀のある神奈川では、平和銀行構想に対して全員が積極的に参加する雰囲気にない。
資本金問題にしても「もし計画通りの資本金が集まらなかったらどうするのか」という質問が出るなど不安感がある。「水面下で大口出資、中口出資が折衝中であり、一口運動もすでに予定額に近い額が集まっている」との回答があったが、公開されていない以上蓋を開けてみなければわからない。

 また、「300億は集まると思うが、今後の目標である1000億円まで増資するのは容易でない」という指摘もあった。

 平和銀行実現の前途にはなお一波乱あるとの見方もあるが、今回の構想は在日社会で銀行作りの事実上最後のチャンスであり、代案がないのが現状である。