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2001/06/01

<在日社会>本の歴史教科書 韓国、再修正を強く要求

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    地方参政権見送りに抗議する在日韓国人と日本人の抗議デモ。500人が参加した(5月30日、東京)

 韓日関係が歴史教科書、地方参政権の2大問題で揺れている。韓国政府の歴史教科書再修正要求に対し、日本政府は検定済みとして応ずる姿勢を見せていない。地方参政権付与法案は次期国会での継続審議となり、今国会での採決はなくなった。サッカーの2002年ワールドカップまで1年を切り、韓日関係をより促進させようという時期の出来事だけに早期の解決が望まれるが、打開策は見えていない。

 韓国の韓昇洙・外交通商相は、「日本の歴史教科書問題は、韓日間の最優先課題であり、歴史教科書が採択される8月中旬までに解決されなければならない」として、先月26日の田中真紀子外相との韓日外相会談で、再修正を強く要望した。

 韓国政府は国連の教育科学文化機関(ユネスコ)の理事会で同問題を取り上げ、日本の歴史わい曲教科書は、「国際理解、国際協力を進める教育を勧告するユネスコの方針に反している」との見解を表明。「再修正を求める」韓国政府の親書も先日、崔相龍・駐日韓国大使を通じて日本政府に届けられたが、日本政府の「再修正には応じられない」との立場に変化はない。

 これに対して韓国内では批判の声が高まっており、先日来日して「つくる会」の歴史教科書の製造と販売禁止を求める仮処分申請を東京地裁に出した韓国与野党の国会議員4人は、日本の弁護士と相談の上、4日に出版禁止を求める訴訟を起こすことにした。

 一方、市民団体、宗教団体など99の団体で作る「日本の教科書を正す運動本部」は12日正午、世界79カ国の日本大使館・領事館、日本の文部科学省前などで一斉にデモを行う計画と発表した。

 韓国のマスコミも日本の対応に強い不満を示しており、「日本・教科書の歴史わい曲は人権に対する国際法違反であり、再修正要求は内政干渉にはあたらない。このままでは韓日友好は破局を迎える恐れがある」などと主張している。


国会で継続審議へ

 永住外国人に対する地方参政権付与法案について、与党3党は29日、今国会での採決を見送り継続審議とすることで決着した。

 同問題は韓日両首脳の会談で何度も話し合われ、日本政府は実現に向け前向きな努力をすると約束。99年秋に自民党執行部が公明党に連立参加を求めた際には、同法案の成立が連立合意に明記されるなど、与党3党の合意事項となっていた。野中広務・元自民党幹事長も再三、「今国会での成立を目指す」と強い意欲を示していた。

 会期末まで1カ月と期限切れが迫る中、公明党は今国会での成立を強く要望したが自民党内の反対意見は強く、小泉首相も慎重姿勢だったため、結局公明党が譲歩する形となり法案は成立しなかった。

 韓日関係、公明党への配慮などで継続審議とはなったものの、自民党内で法案成立派が多数を占めるのは難しく、”廃案”寸前ともいえる状況だ。同法案の”代案”として出てきた特別永住者への国籍取得緩和法案も、今国会での成立は見送られた。

 韓日関係は98年の韓日首脳によるパートナーシップ宣言以降、未来志向の友好関係が続いていた。しかし、金大中大統領が強く望んでいた2002年中の天皇訪韓は、日本政府内部から教科書問題による反日感情の高まりを考慮した見送り論が出ている。

 韓国でも教科書問題で政府の強い対応を求める声が噴出しており、韓日関係の停滞は避けられない見通しだ。