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2001/05/11

<在日社会>歴史教科書再修正要求 否定された「任那日本府」も復活

 韓国が日本の中学校歴史教科書に対し、「歴史を歪曲している」として35項目の再修正要求を出し、日本側が再修正は難しいとしているために、同問題は長期化する兆しを見せている。両国による歴史共同研究や文化交流拡大で乗り切ろうとの意見も出ているが、具体的解決策は見えていない。

 韓昇洙外交通商部長官が8日、寺田輝介駐韓日本大使に渡した35項目の再修正要求案のうち、25項目が「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書に向けられた。

 今回の要求項目で特に強調されているのが、古代史と中世で「任那日本府説」「壬辰倭乱の正当化「中国の属国説」である。「任那日本府説」はすでに韓日の学界で否定的意見が主流であり、「壬辰倭乱の正当化」「中国の属国説」は日本の歴史を美化し、韓国の歴史をおとしめているとして強く批判している。

 近・現代史では、「韓半島脅威説」「江華島事件の目的・計画性を隠ぺい」などが代表的な歴史歪曲例であると指摘された。従軍慰安婦問題に対する記述の欠落・縮小も、女性議員、女性団体、歴史学界などを中心に国内で抗議の声が大きく、重点課題となった。

 韓国政府は3月末から約1カ月かけて、歴史学界、韓国教育開発院、国史編さん委員会などの研究者がチームを作り検証作業を進めてきた。82年の歴史教科書問題の時のような修正要求箇所の提示だけでなく、政府の意見も十分に記述した再修正要求となっている。韓国政府の具体的な要求事項を示すことが、今後の交渉に最重要との判断からだ。

 韓国政府は日本側の対応を見ながら、順次、対応策を打ち出していく方針だ。9日には与野党の韓国国会議員4人が来日、日本の裁判所に問題ある教科書の製造・販売禁止を求める仮処分申請を行った。同問題についての講演会や資料展も韓国各地で行われる。

 一方、日本政府は再修正は難しいとの立場を崩しておらず、今後は歴史共同研究や文化交流の拡大で両国関係を改善できないかとの声が出ている。
 
 歴史共同研究は98年の両国首脳による韓日パートナーシップ宣言ですでに合意されているが、大きな成果はあがっていない。