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2001/03/30

<在日社会>日本政府に差別撤廃勧告

 国連の人種差別撤廃委員会はこのほど日本政府提出の報告書を審議し、朝鮮学校卒業生に対する不平等な扱いなど、人種差別撤廃に向けた日本の努力が不十分であるとして、日本政府に人種差別を禁止するための特別立法の制定を勧告する最終見解を採択した。同勧告を取り入れた日本政府の誠実な対応が求められる。

 日本政府は95年12月に「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約」(以下、人種差別撤廃条約)を批准した。同条約は条約発行後1年以内と、その後は2年ごとに国内における条約の実施状況に関する報告書を国連事務総
長に提出し、CERDの審議を受ける義務を負っている。

 しかし日本政府は、第1回報告書提出期限の97年1月から3年、第2回報告書提出の期限である99年1月からも1年遅れた2000年1月に、やっと第1・2回合併報告書を提出した。

 CERDは3月上旬、ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人種差別撤廃委員会(CERD=サード)で、人種差別撤廃条約を日本政府が遵守しているか報告書を審議し、その結果、日本政府に対して採択した「最終見解」で、個別問題に関する9つの「懸念と勧告」(一般的問題を含めれば21項目)のうち、5つが直接5つが直接コリアン・マイノリティーに関するものだった。

 CERDは、日本が民族的人口統計を明らかにしないことに懸念を表明し、次回の報告書では、人口の民族構成の完全で詳細な情報提供を求めた。

 具体的にコリアンについては、日本国籍を持つ朝鮮民族(99年末で約36万7000人と推算される)の存在を示すことを求めた。

 また朝鮮学校児童・生徒に対する暴力行為およびこの点における当局の対応が不適切であることを懸念し、「人種差別を犯罪とし、人種差別行為に対して効果的な保護と救済措置を確保する」よう勧告した。

 またコリアンマイノリティーに対する就職、教育、社会保障、住居などの差別的取り扱いの撤廃を勧告した。
朝鮮学校に各種学校の認可しか与えず卒業生が入学資格面で不平等な取り扱いを受けていること、いわゆる1条校での民族学級への保障が不十分な点を取り上げ、日本の公的学校でマイノリティーの言語でも教育が受けられるよう適切な措置をとることも勧告した。

 そしてコリアンマイノリティーが日本の国籍を申請する際、その名前を日本人名に変えるという行政的、法的要求はすでにないとする日本政府の報告の一方で、実務レベルでは、当局が申請者に対し名前の変更を促し続けており、差別を恐れてそうせざるを得ないと感じている実態があることに懸念を表明した。

 個人の名前は文化的、民族的アイデンティティーを基本的に表象するものであることを考慮し、こうした実践行為を防ぐために必要な手段をとることを勧告した。

 同委員会は、石原慎太郎東京都知事が2000年4月9日に行った「不法入国した多くの外国人が、非常に凶悪な犯罪を繰り返している」などの発言についても注意を喚起した。

 「国または地方の公の当局または公の機関が、人種差別を助長しまたは扇動することを許さない」と定めた人種差別条約第4条c項に違反するとして、「懸念を持って注目する」とした最終所見を採択したもので、石原発言に対する日本政府の対応も「人種差別撤廃条約第4条c項の侵害の重要性についての行政的・法的行動の欠落」と同じく「懸念」を表明した。

国会で差別禁止法を

 在日韓国人問題研究所などの市民団体・人権団体は、「日本政府はこれらの勧告に基づいて、現在の差別的な行政措置を見直し改善する努力を行い、国会で人種差別禁止法の制定を検討すべき」とした。

 そして「石原知事は今回の最終所見を真摯に受け止め、昨年の発言をすべての在日外国人に対して謝罪すること。日本政府は、公務員、法律執行官、行政職員に対して、国際人権条約に基づく人権教育を行うこと」としている。