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2002/07/26

<在日社会>垣根を越えた大合併予告

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    ペイオフ完全実施への対応などを話しあった韓信協総会

 疾風怒涛の在日信組。在日韓国人信用組合協会(韓信協)加盟組合は、最盛時39組合あったが、現在は15組合に減り、あすか信組と東北4商銀が合併する29日には11組合に激減する。バブル崩壊後バタバタと倒れ、生き残りを賭けた合併も相次いだからだ。だが、これで終わるものではない。来年4月からのペイオフ全面実施を控え、日本の金融当局はさらなる合併・統合を誘導しており、在日信組にも「地域の垣根を越える大合併」が予告されている。16日の韓信協総会は、危機意識の中でこの大合併が今後避けられない選択であることを示した。

 当面最大の課題は、預金元本が1000万円までしか保証されないペイオフ全面実施にどう対処するかであり、今回の韓信協総会でもそこに焦点がおかれた。すでに今年4月からの定期性預金に限ってのペイオフ実施で、中小金融機関から大手金融機関への預金移動が始まっており、韓信協も「加盟組合をみると、昨年3月からこの1年間で破たん組合を含め5751億円(41%)の預金減少となった」と厳しさを認めている。また、赤字転落、ゼロ配当の組合も増えている。

 さらに、韓信協加盟組合に限らず中小金融機関で定期性預金から普通預金への大量の預け買えが進行しており、ペイオフが全面実施される来年4月までにはその普通預金が流出する事態も予想される。

 最近、日本の政界や金融界でペイオフ延期論が出ているのは、「このままでは地域金融にパニックが起こる」と懸念されているからだ。だが、改革を掲げる小泉政権下で再延期の可能性は少ないとみられ、備えを怠れない。
韓信協総会がその対策として打ち出しのが①地域の垣根を越えての広域合併の推進②本国政府への300億円支援要請だ。

 今後、金融機関が生き残っていくためには、情実融資など従来の不透明な慣行は論外であり、徹底した経営合理化・スリム化を図り地域に密着した顧客開拓が不可欠だ。だが、いまの金融環境の厳しさは、それだけで耐えられるものではない。韓信協としても「安定した収益構造を構築するためには広域合併も視野に入れて積極的に推進を図るべきだ」としている。経営の効率化とスケールメリット追求のため、さらなる合併が避けられないという判断だ。

 新任の鄭圭泰会長も就任あいさつで、改めてこの広域合併推進を強調した。
第②の本国政府への支援金要請は、現状のままでペイオフが完全実施されれば韓信協加盟組合は存亡の危機を迎えるという切迫感がある。

 だが、昨年にも支援要請を蹴られた経緯があり、過去35年間にわたり総額400億円に達する支援金の回収が始まっている。韓信協加盟組合の徹底した自助努力が支援金要請の前提となるが、本国政府が今後どう判断するか注目される。

 今総会ではまた、会員組合の短期的な資金運用を調整する手段として「在日韓国人信用組合互助基金」を制定した。これは本国支援資金の担保としての性格も持つとしている。

 韓信協としては、本国政府、在日韓国民団、在日韓国商工会議所の協力を受け生き残りを図る決意を示したが、総会に来賓として出席した駐日大使館の鄭華泰経済担当公使は駐日大使のあいさつを代読、「在日経済のため韓信協の役割は絶大」と述べた。また、金宰淑民団中央本部団長は「全国的な機能調整できる韓信協の機能強化が必要」と強調、金健治韓商会長も「韓商は信組を守り支援する使命がある」とエールをおくったが、いろいろな意味でこれからが正念場をむかえることになろう。

 総会には加盟15信組のうち14信組の会長、理事長らが出席した。唯一の欠席は新たに加わった近畿産業信組だけだった。代理出席はおろか委任状の提出もなかった。協会側は日程の調整がつかなかったと説明している。