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2002/07/05

<在日社会>韓日W杯市民交流深めた1カ月

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    W杯期間中、大勢の韓国人サポーターが街頭に繰り出し大声援を送った

 サッカーのワールドカップ韓日共催大会が6月30日、1カ月間の日程を終えて無事終了した。韓国チームを日本人が日本チームを韓国人が応援する光景が展開されるなど、韓日友好関係を深めるのに大きく寄与した今大会だった。

 W杯期間中、韓国戦の試合が行われた日は在日コリアンが多く居住する大阪・生野のコリアタウン、韓国料理店が立ち並ぶ東京・新大久保のコリアタウン、大使館、総領事館などにも在日韓国人や韓国人留学生が詰め掛け、大声援を行った。

 在日3世で朝鮮籍のある青年は、「在日でしかも朝鮮籍の自分が、韓国人留学生らとテーハンミングッ(大韓民国)を叫んでも一つになれるか不安だったが、新大久保でテレビの大画面を見ながら赤いTシャツを着て叫んでいると、いつのまにか心が一つになっていた。次も絶対一緒に応援したい」と話す。

 在日3世で韓国籍の女性は、「日本の友人と一緒に韓国を応援をした。こんなに興奮したのは初めて。誤審問題で騒がれたのは残念だが、それ以外はパーフェクトな大会だった。勇気をもらった」と語る。

 昨年1月、新大久保駅で日本人の転落客を助けようとして亡くなった李秀賢さんが通っていた赤門会日本語学校でも、学生たちの興奮が続いた。寮で学生たちが大声を出しながら応援するため、近所から苦情が来たが、同校職員が理由を説明に行くと納得し、逆に「韓国がんばれ」と激励してくれたという。韓国が決勝戦まで進んだら、試合会場の横浜に学生全員で行き、場外から応援する計画もしていたという。

 同校では今月12日から2泊3日で、同校の韓国人学生50人と交流を深めてきた日本の市民団体の若者50人の合わせて100人で、「李秀賢さん追悼・W杯韓日共催成功記念|富士山登山」を行う。

 新井理事長は「W杯期間中、学生たちは韓国だけでなく日本も応援していた。W杯は韓日友好に寄与したし、市民レベルの連帯感は強まった。韓日友好を願っていた李秀賢さんも、W杯成功を喜んでくれたろう。彼は登山が好きで、日本では富士山が印象的だと言っていた。それで富士山を登山コースに選んだが、韓日の学生がここで交流を深めることは意義深い」と話す。

 在日韓国人有志と日本人有志で作る「ふれあいコリア・ジャパン韓日共同応援団」の事務局を務める李信一さん(23)は、「韓日のサポーターがともに両国を応援し、雨中の応援をしながら共に泣いたり喜んだり、本当にいい関係が築けた。これをさらに続け、発展させたい。2006年のドイツW杯でも共同応援団を繰り出し、韓日両チームを応援する計画」と話す。

 韓国で1カ月間取材を続けていたスポーツライター(本紙客員ライター)の大島裕史さんは、韓国の若者はすごく開放的になったし、ヒディンク監督が儒教的な上下関係にとらわれすぎる選手たちを指導しチームを強くした手腕を見て、外国のいい所を積極的に取り入れる必要性を痛感するようになった。

 また韓国を応援する日本人サポーターを見て、自分たちも日本を応援しようとする雰囲気もあった。韓国の若者たちは今後、新しい関係を築けると期待したい。