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2003/03/14

<在日社会>在日のための組織に改革を

  • zainichi_030314.jpg

 停滞が続く民団社会を活性化するには、どうすればいいのか。真に在日社会に必要な民団になるため、何が求められているのか。「本国にばかり目を向けるのを止め、真に在日のための民団になってほしい」「発想の転換を大胆に行い、若者が集まる組織に」「文化活動支援、歴史資料館の建設を」など、本紙読者や一般団員からの切実な声が寄せられた。それの声をもとに、改革の方向性を考えてみたい。

 民団の高齢化が言われて久しい。集会や記念行事などの参加者の平均年齢も高い。「韓国では50代半ばの盧武鉉大統領が誕生し、閣僚も40-50代に切り替わっている。なぜ民団は若返りが出来ないのだろうか。団長選挙があるごとに候補者は『組織の若返り』を提唱するが、実現はなされていない。これでは老害だ」との声は、各地で聞かれる。民団が大多数の在日同胞にとって魅力ある組織でなくなっている。

 60代の古くからの団員は、「本国にばかり目が向いていて、在日のための組織であることを忘れている。日本における生活者団体として活動する方針を以前出したはずなのに、相も変わらず公金を使って、三機関揃って物見遊山旅行を思わせる韓国政府もうでばかり。支援金のためか知らないが、足元を忘れている」と、手厳しい意見を寄せた。

 「民団の職員はニューカマー(新規入国の韓国人)がとても多い。まるでその人たちの雇用の場のようだ。肝心の在日が集まらず、本末転倒ではないか。だれのための民団なのか、危機意識を持たないといけない」(60代の在日2世の男性)との指摘もあった。

 関西地方で熱心に支部活動に取り組んできた50代の在日2世の団員は、「現在の役職者は一般団員との付き合いがほとんどなく、一般同胞の要望や問題意識がわかっていないのではないか。いまのままでは民団離れも加速され、組織もどんどんつぶれていく。何か問題が起きたときは民団は必要だと思って参加してきた。しかし現状は公務員気取りのニューカマー達の天下で、在日同胞の利益代表として何を為すべきか真剣に考えているのだろうか。大阪府議会議員の民族差別発言や民族学校の大学入学資格不可の問題でも、在日全体の問題として抗議集会を開くぐらいのことをしてほしい」と語気を強めた。

 やはり関西地域の在日3世の30代女性は、「パスポートは領事館に行けば直接取得できるし、費用も3500円で済む。それが民団を通すと手数料込みということで8500円とか1万円を要求される。これでは民団に出そうと思わない。団費を年間何万円も徴収されているのに。すべての分野で発想の転換が必要では」と訴えた。

 また、都内の30代の在日3世の男性は、「地方参政権運動が進展しないが、在日や日本の市民団体とともに広範な活動をするとか、色々な方法があるのではないか。そうすれば民団に興味を示す青年も増えるはずだ。官僚化された彼らは、民団だけが中心だと思っているから誰も寄って行かない」と疑問を呈した。

 在日の歴史を保存してほしいとの声も強い。

 「個人で在日の歴史資料館を作ろうと資料を収集した学者もいるのに、なぜ民団が出来ないのか。映画上映会やパネル展示などでは不十分だ。日系米国人が歴史資料館を作ったように、自分たちのルーツをきちんと残すべきだ。そうすれば若者も訪れるはず。早急にとり組んでほしい。また機関紙は一部幹部だけの宣伝記事よりも、団員のための紙面報道がほしい」との声が、年代を問わず多くの同胞から寄せられた。

 ある在日文化人は、「W杯や韓国で水害が起きたときに募金活動をしても、在日の文化活動を支援しようという動きがない。知人が韓日交流の催しを企画したが、民団に相談に行ってもチケット1枚買ってもらえなかったと嘆いていた。在日は新しい文化を生み出す可能性を秘めているのに、本来の仕事を放棄して、なぜ本国参りにしか関心がないのか」と怒る。

 民団の未来を考える21世紀委員会が作られ、そこでいくつかのビジョンが示されたが、その後一体どうなったのか、皆目わからないという声もあった。

 「地域の声をくみ上げ、21世紀のビジョンを示して、真に在日のための組織に生まれ変われるよう、組織改革に本腰を入れてほしい。まだ遅くはないはずだ」(40代、在日2世の男性)、「民団が韓国と日本の懸け橋になる時代は終わった。だからこそ、在日のための組織に立ち戻らないといけない。時の政権に媚を売るのをやめて、在日のための民団に戻り、完全自立運営に徹して、一貫性のある長期方針を立てて改革に取り組んでもらいたい。そうすれば本国からも評価されるのでは」(30代、在日3世の男性)などの声は、若い世代から特に多かった。

 「監察機関は、内部不正を団員に代わって監察して摘発をし、公表してほしい。執行部とは任務が異なるはずだ。混同しないでほしい」(2世、70代、男性)との指摘もあった。