ここから本文です

2003/01/10

<在日社会>在日社会 今年も未解決課題山積み

  • zainichi_030110.jpg

    21世紀を在日の輝く時代に(民族文化に親しむ3、4世の子どもたち)

 2003年が幕をあけた。在日社会には地方参政権獲得運動、在日老人ホーム建設、無年金高齢者問題、民族金融機関の再生、公務就任権の拡大、焼肉業界の復権などが課題として残されている。それぞれの現状を追った。


 ◆住民投票に活路

 「定住外国人に対する地方選挙権付与法案」は国会に上程されたまま、継続審議扱いが続いている。この間、99年8月の国会で最初の審議が、2000年5月に第2会期目の審議が、2000年11月の第150回臨時国会で第3会期目の審議が行われた。しかし、2001年の第151回国会で採決延期、継続審議となってから、審議もされないままに今年を迎えた。

 一方で、市町村合併問題などをめぐる住民投票に永住外国人の参加を認めた地方自治体は、昨年1月に滋賀県米原町が可決して以来、18市町村にのぼる。

 在日韓国民団では、住民投票への永住外国人の参加を、地方参政権獲得の一理塚にすべく、積極的に運動を進めている。地方参政権獲得運動がスタートして9年、実現のための多様な運動展開が必要だ。


 ◆統一預金開始

 経営破たん、責任者の逮捕が相次いだ在日韓国系信用組合の統合・再編は、昨年一段落し、近畿産業信組、あすか信組、横浜商銀、広島商銀、愛知商銀、あすなろ信組、九州幸銀、北陸商銀、岡山商銀、長崎商銀、佐賀商銀の11の信組が在日韓国信用組合協会に加盟し、新たな出発を期している。今月6日から3月31日までの日程で全信組が参加する統一預金キャンペーン『ベストイレブン』を実施するなど、信組の基盤強化に取り組んでいる。

 一方、韓国政府には2001年10月から中断している支援金の再開を求め、2002年10月に300億円の支援金を要請し、韓国政府は現在検討中である。

 今後、預金量増加、広域合併の継続推進、店舗統廃合、人員削減などによる経費節減、情報開示にどれだけ取り組んでいけるかが、生き残りの条件となる。

 一方、経営破たんしていた朝銀は昨年末、公的資金の投入を受けてハナ信用組合として再スタートを切った。3月31日まで開業記念キャンペーンを展開中だ。


 ◆老人ホーム建設

 65歳以上の在日韓国人高齢者は現在、7万8328人(2001年末、法務省入国管理局統計課)いる。在日社会、韓国、日本社会ともに少子高齢化が進んでいる。在日1世が安心して老後を過ごせる社会をどう作るかは、急務の課題となっている。

 在日韓国婦人会中央本部(金定子会長)は昨年、在日の老人ホーム建設運動を開始した。老人福祉委員会「ムクゲファミリー」を作り、婦人会員対象に1万人加入キャンペーンを展開、資金を集める。

 順調に行けば3300平方㍍の敷地に100人収容規模のホームを3年以内に建設する。在日のための老人ホームは現在、大阪の「故郷の家」などがある。


 ◆無年金高齢者は

 無年金定住外国人に対する特別給付金支給の問題も課題だ。国民年金制度に基づく老齢福祉金は、制度発足時に国籍条項があったため加入できず、82年の国籍条項撤廃後も経過措置が取られなかったため、86年4月1日現在で60歳以上の高齢者は無年金のままになっている。特別給付金を支給する自治体も増えているが、金額は少ない。

 民団や市民団体は各自治体に特別給付金の支給を働きかける一方、厚生労働省に要望書を出し、救済を求めている。


 ◆今年こそ勝訴

 定住外国人が公務就任する道は長い間閉ざされていた。70年代後半に大阪の市町村で一般事務職を含めた国籍条項が撤廃されたが、都道府県、政令指定都市は一般事務職の国籍条項は撤廃しなかった。96年度に川崎市が一部制限付きながら撤廃、在日3世の女性が合格した。

 政令指定都市の国籍条項撤廃はその後相次ぎ、現在は12の政令指定都市で撤廃されている。都道府県レベルでも97年の高知県から始まって、現在11府県で各都道府県によって職種に違いはあるが開放されている。

 在日2世の保健婦、鄭香均さんが東京都を相手に起こした「都庁任用差別裁判」は、97年11月に高裁で勝訴したが、最高裁に持ち込まれ係争中になっている。すでに5年以上経過しており、今年中の最高裁判決が待たれる。

 最高裁で勝訴すれば、各自治体での国籍条項撤廃の動きはさらに加速化すると見られる。


 ◆焼肉の復権を

 2001年9月の狂牛病(BSE)発生事件は、牛肉料理を中心とした焼肉業界に大打撃を与えた。事件発生以降、全国で焼肉店の売上が激減し、売上額が50%を切る状況に至った(全国焼肉協会調べ)。

 業界が一丸となって牛肉の安全性をアピールする一方、行政も積極的な対応策を講じ、昨年4頭目、5頭目の狂牛病が発生しても売上への影響はほとんど見られなかった。売上も8割-9前後まで回復したという。しかし一方で牛肉偽装問題などによる不安も広がっている。

 在日の焼肉業界は、昨年から様々なイベント、値下げキャンペーンなどを展開しており、今年も各種キャンペーンや新団体設立などを行う計画だ。全国焼肉協会も消費拡大全国セミナーを年末から開催中で、業界あげて焼肉復権を目指す。