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2004/12/10

<在日社会>本で知る韓日関係・文化比較、現代史、歴史論・・・

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◆ソンビとサムライ◆ 朴 承武 著(駐日韓国大使館経済公使)

 ソンビとサムライ。変わったタイトルだが、ともに「士」の意味である。サムライは士農工商の武士、ソンビは朝鮮朝時代の学識と品格を持った人に対する尊称であり、官職を担当する身分、士大夫階級を指す。
同じ上位階級だが、「武の日本」に対して「文の韓国」という違いがあった。また、儒教の受け入れ方にも違いがあり、、身分が固定した日本に対して、社会的制度として「科挙」を採用した朝鮮朝では、平民であっても上位の身分に変わることができた。このような韓日文化・歴史比較が分かりやすく展開されている。

 駐日韓国大使館の朴承武公使(経済担当)が、昨年6月に駐広島総領事など10年に及ぶ日本勤務の経験を踏まえ韓国で出版したものの日本版である。

 現職の外交官が日本をどのように見ているかという点でも興味深いが、さまざまな角度から日本人の内面にまで踏み込んで叙述しており、日本人自身がはっとさせられる場面も多い。韓国人と正反対に日本人の推理小説好きの件など、その理由が分かって思わず膝を叩いてしまう。

 「日本勤務の総決算として現地で体験したものを日本に伝えたいと思った。韓国ではまだ日本の実像、普通の姿が伝えられていないと感じたからだ」

 韓日双方の国民ともお互いに先入見をもちがちだが、本書は、そうような誤った観念の刷り込みを是正してくれる格好の書だ。


◆韓国と日本◆ 権オギ(元副総理)
         若宮啓文(朝日新聞論説主幹)

 来年は韓国が外交権を剥奪され日本の保護国となって100年であり、韓日国交正常化40周年を迎える節目の年だ。

 そいういう節目の年に「近くて遠い国」とかさまざまな言われ方をしている韓日関係の過去100年、今後のあり方を考える人に必読の書だといえる。

 本書は63年に戦後初の東京特派員の経験がある日本に精通した権オギ・元東亜日報社長と、韓国留学経験があり韓国関係の社説などを数多く手がけてきた若宮啓文・朝日新聞論説主幹の対談集。

 タイトルは「韓国と日本国」と堅めだが、お互いの国を深く知る2人のジャーナリストがさまざまな重要人物を登場させ、数多くの逸話を語っており、小説のように興味深く一気に読める。

 権氏は金泳三大統領時代に統一部長官も務めた経験もあり、南北関係の裏話も披露。韓日会談の際、訪韓した反感派の自民党大物の大野伴睦氏氏に朴正熙大統領が「大野先生、今日は寝ましょう」と言って二人で泊まり、大野氏は一気に親韓派に変わったという話。韓国は自慢ばかりするという反省の弁も。

 朝日新聞がワールドカップサッカーの社説を掲げ、韓国側が日本側に働きかける動きを見せたという話も興味深い。

 漢字文化圏、アジア維新などの言葉をキーワードに韓日中の未来にも言及しているが、このテーマに焦点をあてた対談第2弾も期待したい。