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2004/06/11

<在日社会>在日3世の理工系学生はいま「先端科学で社会に貢献」

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    理工系の在日学生、研究員らが思いを語った(科技協事務所で)

 在日韓国科学技術者協会(科技協、洪政國会長)は、韓国の科学技術団体総連合会が国内外の青年科学技術者間のネットワーク作りのために実施しているヤングジェネレーションフォーラム(YGF)に昨年、在日の理工医学系専攻の学生、研究員、会社員を10人派遣した。今年は7月5日から10日までソウルで開かれ、6人が参加する。昨年の参加者及び今年の参加者に、科学技術にかける思い、在日としての生き方などについてアンケート調査を行った。

昨年のYGF参加者及び今年の参加予定者は全員20~30代の在日3世だ。以前は就職差別を受けないようにと親が医学部や歯学部への進学を望むケースが多かったが、今回のアンケートを見ると、幅広い分野に進出しているのがわかる。

 昨年YGFに参加した金成潤さん(27)は東大で機械情報工学を専攻し、現在はソニー勤務。「バーチャルリアリティーの新システムを構築したい」とのこと。安東秀さん(34)は東京大学物性研究所研究員。「物理が純粋に好きだから理工系を選び、表面物理学、ナノテクノロジーを研究」している。金弘泰さん(23)は明治大学理工学部情報科学科4年生。「ロボット科学研究室に所属し、遠隔操作型ロボットの視覚について研究」している。

 今年YGF参加予定の崔育代さん(21)さんは、日本大学生物資源科学部動物資源学科4年生。獣医志望だったので同学部に進み、生態系の研究をした。金永振さん(21)は慶応大学理学部数学科4年生。数学が好きだったので理系に進み、グラフ理論を学んでいる。

 朴純枝さん(22)は東京大学大学院修士2年。有機化学に興味を持ち、現在は免疫疾患の応用研究に取り組んでいる。
 YGFについての質問では、安東秀さんは「多くの同胞と知り合えた。英語の重要性を痛感した」、金弘泰さんは「同じ韓国人でしかも理工系ということで気が合った」、金成潤さんは「人生のビジョンを考え直す契機になった。ハングルを使えないことを恥じた」など、視野が開けたとの感想が寄せられた。今年の参加者も、他国のコリアンとのネットワーク作りに大きな期待を持っている。

 韓国とのかかわりについては、「環境問題について役立ちたい」(崔育代)、「韓国の協会に参加したり、有益な情報を交換して科学技術発展に貢献したい」(金弘泰)、「日本での研究がいつか韓国の科学技術発展につながれば」(安東秀)など、積極的な意見が目立った。
 在日としての生き方、将来の抱負についての質問には、安東秀さんは「在日としての生き方を大切にしたい。将来は研究者として自立したい」、金弘泰さんは「南北関係なくコリアンと仲良くしたい。韓国語も勉強したい」、崔育代さんは「YGFに参加することが在日としての生き方を考えるきっかけになると思っている。自分の道を見極めたい」と答えてくれた。

 起業家への道を歩みたいとの声も強い。金成潤さんは、「周りの人が幸せになれるような生き方をしたい。在日同胞や祖国は、その周りとしての大きな一部。将来は人々に楽しさを与えられるサービスを提供する企業を経営する」、金永振さんは「多くの在外同胞と連携し、新しいムーブメントを作りたい。将来はエンターテインメント関係の会社を起こす」と話す。朴純枝さんは、「医薬品関係の意外性のある会社を作りたい」と会社経営の夢を語ってくれた。