ここから本文です

2006/11/24

<在日社会>コリアン生活支援ネット「ナビ」・介護ヘルパーを養成

  • zainichi_061124.jpg

    在日高齢者の介護問題は切実だ(菊池和子写真集『チマ・チョゴリの詩がきこえる』より

 東京の同胞密集地を中心に介護活動に取り組む在日のNPO法人「コリアン生活支援ネット『ナビ』」が、訪問介護に加えて今年からヘルパー養成事業に取り組み、合格者19人を出す成果をあげている。

 在日の女性有志によって同団体が結成されたのは2004年。その中心になったのが、会の代表を務める在日2世の林瑛純さん(リム・ヨンスン、62)だ。長年看護婦として働いてきた林さんは、介護保険が始まる前にケアマネージャー(介護支援専門員)の資格を取得した。そしてヘルパーの資格を持つ友人らとともに会を立ち上げた。

 「看護婦として働く中で、在日高齢者とその家族が介護で苦労している生活に接する機会が何度もあり、在日の介護相談員が絶対に必要と考えた」

 2005年1月に荒川区内に小さな訪問介護事務所を構え、韓国語ができ、韓国料理をつくることの出来るヘルパーをそろえて、同胞密集地の荒川区、足立区、林さんが居住する北区を中心に介護活動に取り組んだ。

 「認知症が進み、韓国語しか話さなくなった高齢者や、韓国料理をつくってほしいという人たちの要望を受けて、同胞高齢者に穏やかな老後を過ごしてほしいとの願いで行ってきた」と林さんは話す。

 最近は15人ほどの在日高齢者の介護を担当しているが、そのうち3割が認知症、また一人暮らしの人も多く、在日の貧富格差を実感することがあるという。

 2004年7月にNPO法人の認定を受け、今年からヘルパー養成事業の資格を得た。5月にヘルパー養成講座を開催し、20代から70代までの在日女性20人が受講。そのうち19人が3カ月の授業を受けた後、ヘルパー試験に合格している。他の仕事を持ちながら受講した人が多かったため、現在ヘルパーとして働いている人は3人だが、ヘルパー講座を受講したこと自体に意味があるという。

 「福祉とは人が人を支える仕事。そのことを知った受講者は、3カ月後には顔つきがやさしくなっている。また介護保険制度が改定され、これからは自宅介護が必要になる家庭が増える。その時にヘルパーの勉強をしていたことは必ず役に立つはず」と強調する。

 ヘルパー試験には高齢者用と障害者用、両方の資格を得ることのできるものとがあり、来年は両方の資格を持つことのできるヘルパー養成講座を開催する予定だ。また来年2月には、小規模だが在日障害者支援コンサートを仲間と計画している。

 「在日障害者の介護にも携わっているが、親や兄弟が疲弊してしまう家庭が多い。少しでも家族の負担を減らすために、在日障害者向けヘルパーを養成していきたい」

 在日高齢者や障害者が人間らしく生活できる社会をつくるために、今後、在日医療関係者とのネットワークを緊密化していく計画だ。