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2006/06/30

<在日社会>韓国民団・朝鮮総連との和解"白紙状態"に

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    混乱を極めた民団臨時中央委員会(24日)

 在日本大韓民国民団(民団、河ビョンオク団長)の臨時中央委員会が24日、東京・南麻布の韓国中央会館で開かれた。会議では在日本朝鮮人総連合会(総連)と5月17日に発表した和解の共同声明について、河団長が「白紙に戻したような状態になった」と述べた。またこの間の責任を取って人事の一時見直しが発表されたが、混乱の収拾はつかなかった。3人の副団長が辞任(29日現在、氏名未発表)したが、これで決着するかどうか。また、臨時大会開催を要求する署名運動も始まっており、執行部、三機関長がどう対応するかが問われる。

 緊急臨時中央委員会で討議された副団長人事などが、正式決定した。

 この間の混乱の責任を取ってすでに副団長5人の出処進退が、団長預かりとなっていたが、副団長ら3人の辞任を受け入れた。後任はまだ明らかにされていない。

 中央委では監察機関からは、姜英之・企画調整室長の停権処分3年、金東一・平和統一委員長の停権1年、金淳次・副団長の停権1年の処分案が発表された。姜英之・企画調整室長と金淳次副団長は、6・15民族統一大祝典参加に向けた打ち合わせで在日韓国民主統一連合(韓統連)を訪ねており、その責任を問われた。しかし、正式決定には至らず、差し戻しとなった。後日最終決定となる見込みだ。

 民団中央はこの発表で決着を着けようとの考えだが、「混乱の責任は団長にある。団長が辞任しないのはおかしい」「中央大会を開いて選挙をやり直すべきだ」との意見も根強く、事態は予断を許さない。

 中央委では共同声明の評価をめぐり、怒号と罵声が飛び交う大紛糾の場となった。中央委員から「白紙撤回するのかしないのか」と迫る声があり、延々と堂々巡りの論議が続いた。

 「6・15民族統一大祝典」と「8・15記念祝祭」はすでに死文化しているとして、議長が、「議長の立場として5・17問題は白紙とする」と述べた。河団長は、「白紙に戻したような状態」と述べたが、あいまいなままの閉会宣言に罵声が飛び交い、議長席に詰めかける混乱が起こったが、会議は終了した。

 5・17声明の白紙撤回と団長不信任の緊急動議が提出されたが、案件として取り上げられなかった。ただし、執行部としてもこのままでは乗り切れないと判断、「白紙に戻したような状態になった」との考えを明らかにしたものだ。議長は「白紙とする」と述べ、白紙撤回に近い議長宣言をしたが、団長発言はより曖昧さを残した。

 白紙撤回ならば、朝鮮総連に対してその旨を伝えなければならない。今後、共同声明の相手側にどんな説明をするのかも大きな注目点といえる。

 河団長は反省と謝罪は述べながらも、「部下を全員首切って自らは生き残るのか」といった批判や辞任要求ははねつけ、自らの地位は当面守った形だ。

 一方、白紙化の問題では、「総連との和解を白紙化するというのはおかしい」(奈良の姜日錫団長)などの意見が近畿地域を中心に複数出た。

 臨時中央委では共同声明そのものの評価を求める声も強かったが、明確な総括はできなかった。一部からは「赤化統一の野望を持つ北朝鮮の出先機関である総連といま和合する必要があるのか」(尹隆道・神奈川議長)という根本的な問題も提議された。雰囲気的な和合から政治的な和合に進む上で大きな不安感を民団員に残した。

 さらに方法の問題がある。今回、機関決定を経ず水面下での交渉を行ったことに、地方本部などから不信と不満を招いた。これについては反省と謝罪を執行部が行ったが、「納得できない。無効宣言を」(丁海遊・愛知議長)との意見や、北朝鮮の核問題と拉致問題がある時期でタイミングが悪かったとの指摘もあった。特に日本のマスコミの関心を集めた拉致問題での対応は不十分だった。民団のホームページから脱北者支援センターを削除したり会館内のポスターをはがしたのは、独断専行との批判が出た。

 金太河・福島団長の「いつ無くなったのか」との質問に、鄭夢周・事務総長が「自分も知らなかった。企画室長の指示だったことが後でわかった」と述べたのは、組織の一体感の無さ、二重性を暴露した形だ。

 団長不信任案の緊急動議が出されたが、結局受け付けられなかった。「(来年)2月の大会があるのだから、経過を見守ろう。 トップの首切りは行き過ぎだ」という声もあった。

 今回、執行部が何とか中央委を終えることができたのは、議決機関と監察機関の協力があったからで、団長の辞任を求める反対派は早速、臨時大会召集に向けた署名運動を開始した。代議員550人の定員の過半数の署名を集めれば大会が召集できる。

 会議の最後に中央委員会名で、総連に対して民団と共同で北朝鮮当局に呼びかけようという決議文を採択した。決議内容は①ミサイル発射の中止②韓半島からの核の一掃③拉致被害者の現状復帰。この決議文については、「日本社会からの信頼回復につながる」と評価する声も出た。

 いずれにしても、民団の権威とイメージは今回の一件で大いに損なわれた。日本のマスコミにも大きく報道されただけに、在日同胞にとってもダメージは小さくない。一日も早く正常化することが望まれる。