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2006/02/10

<在日社会>国籍などタブーなき議論を

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    記念講演を行う韓昌祐氏(5日、国籍シンポ)

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    在日の未来について議論がなされた(7日、在日シンポ)

 在日社会の未来について考え、新たな方向性を示すためタブーなき議論をと、在日シンポジウムが都内で相次いで開催された。日本国籍取得問題、青少年育成、アイデンティティー、他文化・他民族社会の実現などについて議論がなされた。

「在日コリアンの日本国籍取得権確立協議会」(李敬宰会長)が主催する「『在日コリアンに権利としての日本国籍を-永住外国人から主権者へ』2・5全国集会」は、5日に東京・水道橋の在日韓国YMCAで行われ、100人が参加した。

 李敬宰(イ・キョンジェ)さんは「日本国籍取得の運動は、多民族・多文化社会に向けた一助になると確信する。しっかりした議論をしていきたい」と語った。

 韓国系日本人の道を長年主張して、自身も日本国籍を取得した韓昌祐さん(ハン・チャンウ、74、マルハン会長・世界韓人商工人連合会会長)は、「国籍・参政権 わたしの朝鮮」と題して記念講演を行った。(写真・上)

 韓さんは、「海外同胞は700万人いるが、その大多数が居住国の国籍を取っている。韓国籍を持ち続けている在日は逆に珍しい存在。米国で在韓米軍撤退問題が出たとき、韓国系米国人の議員が陳情して、撤退に歯止めをかけさせたことがある。それによって米軍撤退後に韓国軍に莫大な防衛費用がかかるのを防ぎ、国益に貢献した」として、「在日はどのような存在を目指すのか。本名で日本国籍を取得し、日本の政治・経済に参画し、発言力を高めていくべきではないのか。それが在日と本国の利益につながる。自分はもう年だが、若い世代はそういう生き方を考えてほしい」と訴えた。

 「日本国籍取得の機は熟した」と題して報告した坂中英徳外国人政策研究所長(元法務省東京入管局長)は、「在日はこのままでは消滅しないだろうか。民族名を残してコリア系日本人として生きてほしい。これまでの民団、総連のような本国に依存した運動の時代は過ぎた」と強調した。

 講演を聞いた在日2世の朴三浦さん(出版業)は、「韓国系日本人として地方議会議員・市長、知事、代議士・大臣も夢ではない。韓国系公務員、検事や判事にもなり、地域社会や日本の発展に協力して共生し、善隣友好が発展する欧米に生きる韓国人を見習うべきだ」と感想を述べた。

 7日には同じく在日韓国YMCAで、シンポジウム「『在日』を生きるための現住所-未来への挑戦」(在日韓国YMCA主催)が開かれ、100人が参加した。(写真・下)

 在日2世のペ・ジュンド・川崎市ふれあい館館長は、「1世は帰国建国運動、2世は反差別、そして3世は自己実現を目指してきた。いま在日をめぐる状況は混沌としている。その中でどういう生き方を見いだすか、ナショナリズムをどう乗り越えていくかを考えたい。また運動を通じて文化の大切さを痛感している」と話した。

 1世で国際政治学者の李鍾元(イ・ジョンウォン)・立教大学教授は、「(在日の)妻子と話していると、在日は両方を客観的に見ることのできる存在と実感する。いま国民国家に限界が見え、世界すべてが混沌としている。在日が混沌とするのも当然のことだ。市民が主役の多元国家が韓国、日本にやってくるのか、その中で在日がどうなるのか、まだわからない」と語った。

 在日3世の研究者、洪貴義(ホン・ギウィ)さんは、「在日であることをどう考えるか、個々人が突き詰めていくしかない。ジェネレーションの断絶と継承も重要な事柄」と強調した。

 在日4世の李春花(イ・チュナ)さんは、「いま南葛飾高校で韓国語を教えている。本名を隠す若者や、帰化を考える若者を数多く見てきた。在日の問題は再生産される。それへの対応をどうすべきか」と訴えた。