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2007/11/09

<在日社会>在日2世・金星根監督、アジア野球の頂点狙う

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 韓国、日本、中国、台湾のアジア4大野球リーグの王者が激突する「KONAMI CUP アジアシリーズ2007」が、東京ドームで開幕した。同大会はアジア野球の発展と友好のために開かれる大会で、今年が3回目。韓国代表のSKを率いる金星根(キム・ソングン、65)監督は、京都生まれの在日2世だ。

 金星根監督は、1942年京都生まれ。中学1年生のときに交通事故で父を亡くしている。

 「極貧の生活で、兄や姉が働いて家計を支えてくれた。それを見て育ったので、自然と自立心が身についた」と、子供時代を振り返る。

 桂高校野球部でサウスポーのエースとして活躍。1959年には在日同胞野球団の一員として韓国に渡り、好成績をあげた。高校卒業後、日本の社会人入りを目指すが、在日韓国人ということで就職できず、韓国の社会人野球入りした。まだ国交回復前で、永住帰国だった。

 「家族との別れは悲しかったが、生活費を稼ぎ生きるためと思い、歯を食いしばって耐えた」

 エースとして活躍するものの、肩を壊して現役生活を断念。指導者の道を歩む。84年にプロ野球OBの監督に初めて就任。勝つための細かい野球を韓国プロ野球に導入した。韓国プロ野球8球団中、6球団で監督を務め、ロッテでコーチを経験した後、今年SK監督に就任したものだ。

 2000年に創立されたSKは今年、初めて韓国シリーズに挑戦。ホームでの1、2戦で敗れたものの、その後4連勝で優勝カップを手にした。韓国シリーズで2敗したチームが逆転優勝したのは、SKが初めて。

 金監督はSK監督に就任する以前、すべてのことに干渉し、「(行き過ぎた)管理野球」とのレッテルを貼られていたが、今年はコーチと選手たちを信頼し、充分なチャンスを与えた。

 これは昨年まで日本プロ野球の千葉ロッテでコーチに就任し、米国人監督ボビー・バレンタイン監督から受けた影響が大きかったという。

 金星根監督は、「人はミスをするという前提で、選手の創造力とやる気を引き出すバレンタイン監督に、大きな影響を受けた」と話す。

 スピードとパワーあふれる韓国野球に、データ分析を徹底的に行う日本野球、そして選手を信じて任せる米国野球という、3つの長所を組み合わせたのが金星根野球だ。

 日本人コーチ3人を迎え入れ、日本式の「つなぐ野球」でチーム防御率3・24、総得点603点ともリーグトップを記録して、優勝を勝ち取った。

 そのチームを率いてアジアシリーズに出場する。中日ドラゴンズを破ってアジア王者になることができるか、金星根監督の手腕が注目される。