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2007/10/05

<在日社会>南北共同宣言・「統一への一里塚に」

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    盧武鉉大統領㊨と金正日総書記

 南北頂上会談は韓半島情勢と在日社会にどんな影響を及ぼすのか。在日社会も会談を注視した。各界の在日の声を紹介する。

◆南北経済発展願う 姜 在彦さん(歴史家)

 2000年の6・15宣言がそれまでの南北共同声明と違っていたのは、南北間の和解と交流のための具体的な実践を合意したことだった。金剛山観光、南北鉄道連結、開城工業団地などこの間、積み重ねられてきた。

 盧武鉉政権の今回の訪朝は、それらの実績を点検し、発展させるためのもので、そこに今回の会談の大きな意味がある。

 南北和解、平和体制定着、経済共同体などが話し合われたが、最も大きいのは、具体的な経済共同体についての合意だ。

 南北は開城工業団地という、北の人的資源、南の技術と資金提供という経済モデルを作り上げた。今後、このモデルが北の各地に展開され、5、6年で成果をあげたら、北の自立的経済発展につながる。金日成主席の時代から北の目標は、人民の衣食住を満たすことだったが、その道筋をつけることにつながるので、65歳になる金正日総書記としては何としても成功させたいだろう。そういう意味で経済共同体に注目したい。

 同時期に6者協議で年内の核無能力化に合意したことが発表されたが、日本にも大きな影響を与えるだろう。この数年、拉致事件に端を発し在日社会には北風が吹いていたが、その風向きも変わっていくだろう。

◆平和体制づくりを 李 鍾元さん(立教大教授)

 2000年の南北頂上会談に比べると高揚感や派手なパフォーマンスがなかったのは確かだが、それは逆に言えば、南北関係が進展し、実務的にこなせるようになった証拠ともいえる。

 合意内容を見ても、大きな局面転換というよりは、少しずつ事態が進展することを示すものだ。

 朝鮮戦争の休戦体制を終息させるために南北が協力することを合意したことは、韓国の当事者性を明確にしたもので、最も意義が大きい。

 核問題や軍事問題にも言及がされたが、韓国は経済を重視しながら平和体制を拡張したいと考えており、それが反映された宣言となった。今後の具体的な成果を注視したい。

◆経済共同体に注目 姜 誠さん(フリーライター)

 米国がこれまでの政策を転換させ、北との平和協定締結を念頭に置いていることは、南北頂上会談の追い風となっている。

 韓国側は多数の経済人とともに訪朝することで、経済共同体づくりへの意欲を示している。安全保障と経済協力がセットで進めば、年末の選挙でだれが大統領になっても融和政策は進んでいくだろう。

 南北頂上会談が定例化し、南北経済協力が進展して経済共同体が実現化すれば、それは一種の統一とも見ることができる。

 そうなれば、民団、総連を問わず在日の経済人が参画できる余地も出てくるし、在日社会の統一にもつながると期待したい。

◆朝日交渉にも影響 金 時鐘さん(詩人)

 一日も早く休戦協定を平和協定にすべきと、以前から主張してきたが、その端緒が南北頂上会談と6者協議で見えてきた。平和協定が締結されれば、北の核武装も必要なくなるだろう。

 分断から統一へ向かう一歩として、今回の会談は評価できる。北と日本の国交正常化交渉にも影響を及ぼすだろう。

◆離散家族再会を 田 月仙さん(声楽家)

 前回の会談時、父はテレビの前で泣きながら見ていた。南北が握手と抱擁を交わすのに数十年もかかったことは本当に悲劇で、一日も早い統一を望むのは人々の純粋な気持ちだと思う。

 7年経って2回目の会談が実現したが、すぐに統一は無理でも、1000万離散家族の再会が進むことを期待したい。

◆一歩ずつ解決に 梁 石日さん(作家)

 北は南の経済投資は必要だが、改革と開放には抵抗を示している。韓国側にしても、投資した資金が無駄になることは避けたい。どちらもジレンマを抱えている。だから関係進展はまだまだ時間がかかるだろう。

 南北が徐々に関係を深める中で、核や拉致の問題が一歩ずつ解決に向かってほしい。

◆南北平和を予感 李 貴絵さん(団体職員)

 韓国の大統領が徒歩で軍事境界線を越えたのは、南北の平和を予感させる出来事で、とても印象深かった。今回の会談が平和協定締結につながり、さらに日本と北の関係改善にもつながれば、在日社会にとっても大変意義深いと思う。