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2007/05/11

<在日社会>具秀然監督に聞く 「在日パワーを伝えたい」

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    『The 焼肉ムービープルコギ』(c)2006プルコギ製作委員会

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    グ・スーヨン 1961年山口県下関市生まれ。在日2世。26歳でディレクターデビュー。CM界の鬼才として話題作を多数手がける。

 在日2世の具秀然監督の新作映画『ザ焼肉ムービー プルコギ」が、東京・渋谷のシネクイントほかで全国公開中。白肉対赤肉の焼肉対決をメインに、家族の愛情を盛り込んだ力作だ。具監督に話を聞いた。

 具監督と弟で脚本家の具光然氏が、焼肉バトルを題材に映画化を考え、実現に至ったのが『ザ焼肉ムービー プルコギ』である。

 「関西ではホルモン系(白肉)の人気が高いが、東京では赤肉が主流で白肉はあまり人気がない。白肉も赤肉も色々な種類があるが、日本の人はそんなに詳しくは知らない。日本で焼肉という食文化を広めたのは在日コリアンだし、在日の一人として、焼肉の魅力を新たな角度で伝えられたらと考えた。映画としても面白いと直感した」

 本物の料理映画を作るために、焼肉料理の名店、料理研究家などに料理指導を依頼。白肉は絶品ホルモンを提供する店として有名な東京・月島の焼肉酒家「傳々」のおかみ、赤肉は服部栄養専門学校に依頼してレシピを開発した。

 「おいしい焼肉を作り、広めるために、在日がいかに工夫を重ねてきたか、映画を通して伝わればと思った。撮影中に肉がどんどん焼けて変色していくので、撮影のタイミングが難しかったし、焼ける音を出すのも大変だったが、焼肉の魅力を伝えたい一心でやり通した」。

 「主演の松田龍平さんや山田優さんも徐々に料理に親しんでいった。特に田村高廣さんは名優だけあって、在日コリアンの歴史や韓国料理の基本などを勉強して撮影に臨み、現場でも色々と助言をしてくれた。病気で亡くなり、本作が遺作となったが本当に感謝している」

 CMディレクターだけでなく、小説家、映画監督としても活躍する具さん。在日をテーマにした作品を今後も作り続けたいとの希望を持っている。

 「在日に生まれたマイナス部分をプラスのパワーに変えたいと考えて生きてきた。在日の新しい世代が次々にプラスパワーを出せば、世の中は変わるはず。在日の食文化、そして在日のパワーを伝える作品として、この映画を見てほしい」