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2007/03/02

<在日社会>韓国政府補助金乱用と虚偽報告・金宰淑(当時中央団長)警告、具文浩(当時中央副団長)停権2年

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    民団改革を話しあった第61回定期中央委員会

 在日韓国民団中央本部(鄭進団長)の第61回定期中央委員会が2月23日、東京・南麻布の韓国中央会館で開かれた。財政自立化に向けて事業局を新設して収益事業を展開、財源に役立てるとした。また、昨年の政府会計監査で指摘を受けた政府補助金の乱用と虚偽報告問題について、金宰淑氏(当時の中央団長)を警告処分、具文浩氏(当時の会計責任者)を停権2年にすることが決定した。

 韓国政府補助金の会計監査で指摘された虚偽報告問題については、公認会計士による外部監査の報告がなされた。

 それによると「補助金執行の虚偽報告については、虚偽の事実があった。特別事業資金4172万円の会計処理の不透明性については、会計上の誤りがあった。オリニジャンボリーの会計処理問題については、事業費の計上方法に誤りがあるが、決算書が完全でないため、今後さらに確認の必要がある」と指摘された。今回の報告は、「調査方法や時間および範囲が限定されており、いわゆる全面的・網羅的な精査ではない」とのことである。

 政府補助金の使用実態をめぐる民団内部、在日社会、そして本国政府の視線は厳しい。公認会計士の継続調査と、一般団員への詳細な説明が今後必要だ。

 中央委員会ではまた、昨年5月17日の朝鮮総連との共同声明発表をめぐって起きた組織内混乱についての特別報告がなされた。前執行部の対象者8人に面談要請を行い、2人から事情聴取を行ったが、河ビョンオク前団長ら6人は応じなかったことが報告された。その上で、中央委員会の合意なしに5・17共同声明を進めたとして、監察委員会に処分の件を一任することを正式に決議した。

 民団の財政自立化は、韓国政府補助金をめぐる紛糾と関連して、緊急を要する課題として浮上。中央本部に事業局を新設して、これに対応することとなった。各種収益事業を開発していくとともに、「MINDAN医療保険」の継続推進、自販機の設置を地方本部などで進めて、収益をあげていく。

 今後、事業局の下に財政基盤造成委員会(仮称)を設置して、健全財政確立のために中長期的な計画を研究していくことも確認されたが、立ち上げ時期、人員などは未定で、民団では「早急に設立したい」としている。全組織的に経費節約することも確認された。

 また韓国政府補助金については、一般会計と分離して別途に管理する、事業費だけに使用し組織の運営費・人件費には使用しない、事業推進報告書の作成について研修会を開くことなどを決定。

 政府補助金を領事館を通して地方へ一部直接支給(全体の20%)する問題については、従来通り中央本部を通して全額配分するよう求めることを賛成多数で決議した。

 しかし、韓国政府がすでに分割支給を決定していること、あわせて各地方本部に事業計画書の提出を求めていることから、今後の実施に紆余曲折が予想される。

 また、民団中央本部が2月末までに韓国政府あてに提出を求められている事業計画書については、中央委員会で決議された方針案などをもとに作成、提出を予定しているが、これについても論議となる可能性がある。

 同胞生活支援事業は、「同胞生活センター」(仮称)を設置・運営し、在日同胞のための生活法律相談事業を拡張・充実化する。羅鍾一・駐日韓国大使から提唱された「在日同胞奉仕賞」を制定し、在日同胞および日本社会に奉仕した在日同胞の功労に報い、同賞を授与する。

 さらに民団福祉事業推進委員会を再整備して、在日同胞高齢者のための老人ホーム建設を追求、福祉事業推進のため福祉関係の専門家によるネットワークを確立していくなど。

 組織方針としては、全世帯への個別訪問活動を前期(5~7月末)、後期(9~11月末)に分けて実施。団員実数や世帯構成、団費状況などを調査するとともに、団員の意見や要望を聞き、組織運営に活用する。

 ほかに、永住韓国人に対する再入国制度の適用除外要求、地方公務員の国籍条項撤廃運動を継続推進などを確認。

 韓日親善活動としては、朝鮮通信使400周年記念行事への参与、日韓親善協会の活動支援、地域で市民団体などとの交流活動推進を決めた。

 また、「MINDAN文化賞」(仮称)を設置し、ノンフィクション、論文、写真、デザインなどの各賞を設定し、優秀な在日人材の発掘・育成に寄与する。孝道賞もここに組み入れる。

 民団新聞はこれまでの月3回、約6万部の発行を、年間30回にして発行部数も縮小。また第1段階として民団関係者など5000人を対象に、年間3000円の有料化を始めることを決議した。

■解説 大幅リストラ断行し、自立運営を■

 財政自立化の問題は今に始まったことでなく、以前から、抜本的な対策を講じるべきとの指摘があった。7~8億円にのぼる政府補助金に頼り切った運営でいいのかという団員の声もあった。大リストラや機構改革をすべきとの意見もあったが、なかなか実現されなかった。それが、政府補助金の乱用と虚偽報告問題などで一挙にクローズアップされ、民団は追い込まれることになった。

 今回の中央委で事業局の設置を決めたのは、その流れの一環だが、新設される事業局がどのような役割を果たすのか定かではない。ただ、収益事業の展開、各地方本部に自販機を設置するなどの案をみると、民団組織が本末転倒に陥りかねないとの憂慮を覚える。在日同胞社会の発展、不遇な同胞への支援など、もっと在日同胞のためになる課題を発掘、推進することが必要だろう。

 財政自立化で早急に取り組むべき問題は、大幅なリストラだ。「高給は取るが働かない、高級官僚化した人士は即刻更迭すべき」との指摘は、以前からあった。

 この際、60年前の創団精神に戻り、「自立運営」「奉仕精神」を大切にする組織を想定してみる必要があるのではないだろうか。