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2008/11/14

<在日社会>在日の俳人・姜ギドン氏の半生、演劇に

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    半生を語る姜琪東さん

 在日2世の俳人、姜ギドンさんの句集「身世打鈴(シンセタリョン)」が、音楽劇「アウトロー WE 望郷編」となって、東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターで上演されている(16日まで)。差別、貧困、通名…、姜さんの波乱万丈の人生を日本と在日の演劇人が舞台にしたもので、在日の苦難の歴史が表現されている。

 姜ギドンさんは1937年高知県生まれ。アートネイチャー会長を経て、現在は俳人として、「文学の森」を主宰し、文学活動に打ち込んでいる。これまで『パンチョッパリ』『身世打鈴(シンセタリョン)』『姜ギドン俳句集』などを出している。

 姜さんが、その半生を自ら詠んだ俳句集『身世打鈴』に、10年ほど前に出会った演劇家の中西和久さん(京楽座主宰)は、「燕帰る 在日われは 銭湯へ」「ビール酌む にっぽん人の 貌をして」などの俳句に引き込まれたという。

 「一句一句が『個』の深みを持っている。いつかこの句集をドラマにしたい」と考え、それが今回実現したものだ。

 舞台は15歳の姜さんが、戦後まもなく福岡から大阪のドヤ街に流れてくる場面から始まる。差別が厳しい時代、在日であることを隠し、様々な日本名を使って職を転々とする。仕事ぶりを認められ正社員の話があっても、戸籍謄本を出すようにいわれると逃げる。

 釜ケ崎で10年間日雇い暮らしをした後、ラーメンの屋台を始めて売上を伸ばすが、好意を寄せてくれた女性に、在日と打ち明けることが出来ず、姿を消す。上京後、事業を始めて成功するが、在日を隠す生活に変わりはない。そして…。

 姜さんの若き日を中心にストーリーが展開され、姜さんの俳句が要所で紹介される。

 在日の演劇人、舞踊家ミュージシャンなども制作に協力しており、在日と日本の合作による演劇となった。民族差別の醜さ、出自を隠す苦しさなどを描きながら、在日から見た戦後日本を赤裸々に表現していく。

 姜さんを演じた中西さんは、「姜さんの俳句は在日、日本人に関係なく、人間の生き方を考えさせてくれる。それを演劇で表現したかった。俳句に接するように舞台を見てほしい」と話す。

 姜さんは、「無意識の差別も怖いが、無意識の被差別も怖い。それを句集で表現してきた。在日をテーマにした芝居を、多くの日本人が観劇してくれるのを見て時代の変化を感じた。(劇に出てきた)15歳の姜ギドンを抱きしめてやりたくなった」と語り、「在日がなぜ日本の俳句をやるのかと言われた時期もあった。在日に対する差別はまだ残っているが、私たちは日本で生きていく存在だ。日本社会を愛し、より良い社会にするために発信していくことが、和解につながると思う。在日が日本文学である俳句を行うことも、大きな意味がある」と強調した。