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2009/08/21

<在日社会>金大中・元大統領を悼む、「民族統一への道切り開く」

  • 金大中・元大統領を悼む、「民族統一への道切り開く」

    延世大学セブランス病院に設けられた祭壇には大勢の市民が弔問に訪れた

 韓国の民主化と経済発展、南北統一の活動を推進した金大中・元大統領は、在日社会にも大きな影響を与えた人物だった。思い出を聞いた。

◆「経済危機の克服にも手腕」 姜在彦さん(カン・ジェオン、歴史家)◆

 韓国民主化運動の象徴的存在であるとともに、97年の通貨危機を克服した、経済的にも優れた見識を持った人物であった。日本との関係においても、韓日首脳会談でパートナーシップを宣言し、日本の文化開放を実現したことは、大きな業績だったといえる。

 多くの日本人が韓国の文化に関心を持ち、また在日にとって(韓国が)誇れる祖国となり、韓日関係が促進したのも、金大中氏の民主化への闘いと政策実現があったからこそといえるだろう。

 さらに2000年の南北頂上会談で南北関係に風穴を空け、金剛山観光や開城工業団地を実現させたのも、画期的な出来事だった。太陽政策については韓日の中に批判的な意見もあるが、民族統一への道を切り開いたことは確かだ。

 太陽政策の精神をどう継承していくか、それが今後大切になってくるだろう。

 ◆「韓国民主化に生涯を捧げる」 裵重度さん(ペ・ジュンド、神奈川・川崎市ふれあい館館長)◆

 韓国の民主化に生涯を捧げた人で、近代的なセンスの持ち主だった。70年代、韓国の民主化を願う在日の若者たちが、来日した金大中氏の身辺警護を行っていた。当時29歳の私もその一人だった。金大中氏の著書を日本で出版するため活動にも参加して、本の感想を金大中氏に聞かれたこともあった。73年の拉致事件当日は別の場所にいたが、いまも忘れられない。

 あの事件によって金大中氏は、日本社会はもちろん、在日社会とも深い関わりを持つことになった。民主主義と統一への熱い思いを実現するために、政治家としての権力を何よりも欲した現実主義者でもあった。

◆「民族融和の志を継ごう」 金時鐘さん(キム・シジョン、詩人)◆

 韓国民主主義を作り上げた人物であり、民族融和の象徴でもあった。2000年に訪朝して南北頂上会談を実現したのは歴史に残る偉業だった。北の指導者が約束通り、ソウルに答礼訪問していたら、南北の緊張緩和はさらに進んだはずで、それが実現できなかったことが残念だ。

 太陽政策を推し進めた2人の大統領が亡くなったが、金大中氏の志を韓国民が再び呼び起こしてほしい。

 80年の光州事件に衝撃を受けて、詩集「光州詩片」を書いたが、金大中氏が米国に亡命することになった際、その詩集が日本人支援者の手を介して金大中氏に届けられた。「光州事件に関する記事を読むのはとてもつらかったが、この詩集を読んでから、再び事件の記録を読む勇気が湧いてきた」との感想をいただいたことが忘れられない。