ここから本文です

2010/01/22

<在日社会>未来を担う美術家展・在日3世の呉亜沙(オ・アサ)さん出展

  • 未来を担う美術家展・在日3世の呉亜沙(オ・アサ)さん出展①

    呉 亜沙 「樹海」 2009年 油彩 キャンバス 撮影:島田 恒平

  • 未来を担う美術家展・在日3世の呉亜沙(オ・アサ)さん出展②

    製作中の呉 亜沙さん

 「未来を担う美術家たち DOMANI(ドマーニ)・明日展2009」が、東京・六本木の新国立美術館で開かれ、在日3世の画家、呉亜沙さん(31)の作品が好評を博している。

 同展は、日本・文化庁の在外研修制度(新進芸術家海外研修制度)により、海外派遣された若手芸術家の成果発表の場として、98年から毎年開かれている、若手作家の登竜門的意味合いを持った展示会だ。今年で12回目。

 今回は近年に海外派遣された研修生を中心に、美術部門の様々なジャンルから12人の実力作家を選出し、現代日本の美術の一断面を切り取って紹介している。その中の一人が、神奈川出身の在日3世、呉亜沙さんだ。女子美術大学と東京芸術大学大学院で学んだ後、画家となった。これまで日本をはじめ、韓国、米国、シンガポールで作品紹介されている。

 「自分とは何者か、自分と他者との関係をずっと考え、絵画に表現している。私は在日3世だが、3世になると朝鮮半島、ルーツとの距離感が微妙になってくると思う。その距離感を朝鮮半島を象徴するウサギを用いて、東京タワーなどを背景とした世界に配置して表現した。『My position‐return to Tokyo tower』という作品に仕上げた」

 呉さんは文化庁の派遣で人種のるつぼといわれるニューヨークに行き、1年間生活し、何世代もそこで移民として住んでいる人を体感した。

 「異国に暮らす中でのそれぞれのアイデンティティー意識の多様性、柔軟性を感じた。そしてアイデンティティー探求を起因としたコミュニケーション問題を意識して表現するようになった。樹海という作品は、都会の中の孤独を描いている。自分が見ようとしない他者、逆に他者から見えない自分を表現し、コミュニケーションとは何かを問いかけている」

 「在日のアイデンティティーはナショナリズムにおいても宗教観においても、世代を重ねるごとに帰属性が不安定となり難しい問題だ。今後も在日として、また個人としてのアイデンティティーを問い直しながら、創作活動をしていきたい」